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TALK SESSION――矢野博康 × 土岐麻子 × コトリンゴ、豪華作家陣によるスペシャル鼎談!!(2)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年09月16日 18:00

更新: 2009年09月16日 18:03

文/久保田泰平

子供扱いせずにひとりの人間として書いてみようと

――さて、このへんで女性作家陣のおふたりにも。まず、今回初めて参加したコトリンゴさんから。参加するにあたって、作品を聴いたりしたと思うんですけど、南波志帆という女の子にそんな印象を持ちました?

コトリンゴ「15歳って聞いていたので、すごく現代っ子なイメージを勝手に抱いてて、これは話も合わないんじゃないかなあって思ってたんですけど(笑)、志帆ちゃんはすごく真面目な子で、いい意味で全然現代っ子ぽくなくって、ちょっと安心したっていうか。〈私が私が〉っていうのでもなく、すごく気を遣ってくれる子なんですよね」


Photo by RyoNakajima(SyncThings)

――そんなイメージを広げて、今回の“クラスメイト”を書き下ろしたわけですね。

コトリンゴ「曲を作った時はまだお会いしてなかったので、ホント、声のイメージだけで」

――声とヴィジュアルだけでイメージを膨らませたと。

コトリンゴ「そうですね。すごく可愛い声だったので、普段自分で自分の曲を作る時に、さすがにこれは歌えないだろうっていうぐらい可愛い歌詞を書きたかった(笑)。学校の帰り道を思い出しつつ……。(メロディーラインが)自分でデモを録るのも難しかったので、〈大丈夫かなあ?〉って思ってたんですけど、わりと頑張り屋さんのようで、ぜんぜん問題なかったみたいですね」

矢野「高い声もちゃんと出たしね。コトリちゃんからもらったデモの段階で世界観が出来上がってんで、〈一回マネして歌ってみる?〉って。でも、そっからもうちょっと色を足していこうかって……この曲に限らず、いっつもそんなディレクションなんですよ(笑)」

土岐「なんか、矢野さんと志帆ちゃんの関係って不思議なバランスなんですよ。前回も参加させてもらったんですけど、ふたりが話してるのを見てると、パッと見はすごく年上のプロデューサーと子供っていう感じ(笑)……だけど、友達同士みたいな感じでやりとりしながら作ってるんですよ。歌録りのところしか見てないんですけど、ときどき志帆ちゃんのほうが大人に見えるときもあるっていうか(笑)」

矢野「ヤバい(笑)」

土岐「志帆ちゃんが矢野さんの心を読んでる、っていうか矢野さんが読まれてるっていう(笑)。基本的に矢野さんがディレクションして彼女が受けるから、受けるほうは言われっぱなしってイメージがあるけど、そうじゃないんですよ。いろんなディレクションを受け止められるだけの大きな受け皿を持ってるっていうか」

矢野「ああ、なるほどぉ」

土岐「そこはすごく大人っぽいなあって思った」

――土岐さんはファーストに引き続いて、ということになるんですけど、今回“セプテンバー”という曲で詞を書かれてますよね。

土岐「はい、9月発売と聞いてたんで(笑)」

――“セプテンバー”っていうと土岐さんのオハコのカヴァー曲(アース・ウィンド&ファイア)と同じタイトルで。

土岐「タイトルが思い浮かばなくて(笑)。他の曲の並びをいま見て、もっと凝ったタイトルにすれば良かったなって思ったんですけど(笑)」

――2ワードで、と(笑)。土岐さんから見た南波志帆ちゃんの印象はどうだったんですか?

土岐「私もコトリさんと同じように、ファーストで詞を書くということになった時、生意気ガールだったらどうしようって思ったんですよ(笑)。でも、歌声を聴いたらそういう子じゃないだろうなって気がして。で、矢野さんからの情報を自分のなかでプロファイリングしてって(笑)。自分が15歳の頃とかをいま思い返すと、別にわけのわかんない生物ではなかったっていうか、いまと全然変わってないなって。そういう感覚で詞を書いていけば、すんなり受け容れてくれそうな感じがしたんですね。スレてないし、年のわりにはオトナだって話を聞いていたので、子供扱いせずにひとりの人間として書いてみようと思って。前回、詞を書いた“はじめまして、私。”という曲では、〈生きられますか〉とか意識的に強い言葉を使ったんですけど、こういうベビーフェイスな子がベビーフェイスな声で〈生きる〉とか歌うのってすごく切ないなと思って。そういうバランス感を発見して、今回“セプテンバー”でもそんな感じの歌詞を書いて」

――今回もラスト・ナンバーになってますけど、言葉がものすごく後を引く感じですね。

土岐「歌詞だけ見ると、結構アンニュイな感じっていうか。学校を題材にした詞を書いたら楽しいだろうなあって思いつつも、こういう一面を表現するのもいいのかなあって思って。なんか、写真がいつも不思議だなあって思うんですよ。実際お会いすると、こういう感じじゃないんですよね。いつもキラキラした笑顔で、スカしたところがないっていうか。だけど、ジャケットの写真はアンニュイな感じなので、そのバランスがいいなあって思った。服装とか髪型とかすごく少女らしいんだけど、いつも明るいあの娘が一瞬見せるアンニュイな表情……みたいな(笑)。そういうバランスが志帆ちゃんの場合はグッとくる」

――そういった作者の願望をちゃんとこなしてくれるのが頼もしいところですよね。

土岐「そうですね。たぶん、素直な子じゃないと素みたいな部分が出せないっていうか、すごく構えちゃったり、作っちゃうと思う。私が15歳だったら絶対そうだろうなあって(笑)」

矢野「ヘタな演技指導とかはしてないんですよ。だからこそ音と詞と本人が密接な感じで聴こえるっていうか。そこでひとつ演じなきゃって思うと、作品が僕のものだったり土岐さんのだったりコトリちゃんのものだったりっていう、作者のパワーが勝っちゃうじゃないですか。わりとサラッとこなせるのは彼女の才能かもって思いますけどね。たぶんちっちゃいころからミュージカルをやってたりして、そういうところでの人格形成が大きいと思うんですよね。大人慣れしてるっていうか」

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