INTERVIEW――ハード・ロックへの憧憬とヒネくれたクリエイティヴィティーを融合させた、新感覚サウンドに興奮!
「最近感じるのは、年々自分の作る曲ってイビツなんだなあってことなんですよね。奇を衒わなくてもイビツになっちゃう。でも、そのイビツさが自分のルーツ。40歳になってそれがなんとなくわかってきたんですよね」(會田茂一、ヴォーカル/ギター:以下同)。
もともと手広くやってきた人ではある。木村カエラ、YUKI、Chara、BONNIE PINKなど女性ミュージシャンをバックアップしたり曲提供する際には、持ち前のメロディーメイカーとしての人懐っこさが全開に。一方、昨年脱退を表明したエルマロ時代はかなりジャンクでダーティーな質感の綿密構成型ロックを展開。と思いきや、昨年発表された初のソロ名義作は一転してすべての演奏をひとりでこなすベッドルーム型作品だった。それでも思う。アイゴンこと會田茂一の使命は、古式ゆかしきハード・ロックをまったく新しい音楽として現代に蘇生させることなのではないかと。そんな彼が、bloodthirsty butchersの小松正宏(ドラムス)、佐藤研二(ベース)と共に組むFOEの約3年ぶりとなるニュー・アルバム『DO NOT KILL 'EM』は、改めてそう確信させてくれるだけの熱血作だ。
「最近、結局なんだかんだで身体が自然と反応してしまうのってハード・ロックなんだなってことに気付いて。いつもプレイヤーをシャッフルさせて聴くんですけど、ハッとするのってやっぱりクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとかメルヴィンズのようなロックなんですよね。で、思えば僕の好きなバンドの背後にはブラック・サバスとかディープ・パープルがあるってことに辿り着いた。だから今回のアルバムで最初に出来たのはタイトル曲なんですけど、これが出来た時、〈あ、これディープ・パープルみたいだな〉って思ったんです。僕、もともとイアン・ギランがいた頃(のディープ・パープル)や昔のブラック・サバスとかが大好きで。実は『DO NOT KILL 'EM』も仮タイトルは〈ギラン〉だったし(笑)、デモはもっと甲高い声でシャウトしてたんですよ。そういう話をしたら、ドラムの小松っちゃんは異常に盛り上がってましたけど(笑)、今回はそういう遊び心みたいなのが結構ダイレクトに出ているかもしれません」。
『DO NOT KILL 'EM』というタイトルもなにやらオドロオドロしいが、曲名に目を落とすと、“SMOKE & WATER”なんて思わず笑ってしまうようなものも。ジャケットもちょっとストーナー・ロック、ドゥーム・メタルを思い出させるような示唆的なアートワークだし、実際にぶっとい音を出させたら會田の右に出る者はいないと断言できるようなエナジェティックなギター・リフがバリバリと飛び出す。いまこそハード・ロックの連綿と続く歴史に対して、パロディーと紙一重のオマージュを捧げるような気持ちがそこに働いたのかもしれない。
「ハード・ロックが好きっていうのは、単純に〈もっと興奮できる音楽を作りたい〉って気持ちでもあるんですよね。このまま〈LOUD PARK〉に出ちゃいたい、みたいなね(笑)。そういう気持ちが、このアルバムには確かに込められていると思います。あと、僕はUSインディーなんかも大好きで聴きますけど、最終的に盛り上がっちゃうのってメタリカとかフー・ファイターズなんですよ。つまり売れているもの、大衆的なものが好き。好きな音楽に素直に反応して興奮するのが自分の個性なんだなって改めて感じますね。なのに曲を書いてみるとどうしてもイビツになっちゃう(笑)」。
▼會田茂一が参加したアーティストの作品を紹介。
▼関連盤を紹介。
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