ジャクソン5を見い出したボビー・テイラー
ボビー・テイラーとはノースキャロライナ出身のシンガーで、カナダはヴァンクーヴァーで結成されたヴァンクーヴァーズで活動を開始し、65年にモータウンと契約している。68年には“Does Your Mama Know About Me”や“I Am Your Man”(ライアン・ショウがカヴァーしていた)をヒットさせてもいるが、その年の夏、ヴァンクーヴァーズを率いてのライヴの前座で、彼はJ5に出会った。しかも、そこからすぐにモータウンと契約させるべく、ジャクソン家の面々を強引にデトロイトへと連れて行ったのだそうだ。J5のティトも後に〈ボビー・テイラーが僕らの人生を変えてくれた〉と語っているように、フィルムを撮影してLAのベリー・ゴーディにまで届けさせるほど、J5に関しては熱が入っていたようだ。その情熱もあって、ボビーはJ5を最初に後見する立場となった。
そうした奮闘以外にボビーに功績があるとすれば、それはベリーに〈もっと子供らしい歌を歌わせるべきだ〉と叱られながら、デビュー前のマイケルにリズム&ブルース~ソウルのクラシックを山ほど歌わせて録音し、そのフィーリングを吸収させたことだろう。マイケルの才能を前にしたボビーは、わざわざ子供っぽく作為を加える必要はない、と考えたのだそうだ。最終的にはベリーとの対立が過ぎて、ボビーはデトロイトに返されてしまう。が、その置き土産は『Diana Ross Presents The Jackson 5』の大部分を埋め尽くし、ベリー渾身の“I Want You Back”と同じように聴く者をワクワクさせてくれるのだ。
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