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WITH A CHILD'S HEART スティールタウンの天才少年

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年08月26日 18:00

更新: 2009年08月26日 18:21

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/林 剛

  マイケル・ジャクソンは最期まで無垢な少年の心を失わなかった人だったと思う。亡くなったいまだから言えるが、これ以上歳をとっていく姿が想像できないほど〈永遠の少年〉だった。それは何も一連のゴシップを連想させようとして言っているわけではない。ソウルフルなヴォーカルとキレの良いダンスを体得したのと引き換えに失った少年時代の普通の生活……それを追い求めることが彼の人生のテーマのひとつだったように思えるのだ。

 彼が73年にモータウンからソロ・リリースした“With A Child's Heart”という曲がある。スティーヴィー・ワンダーの66年曲をカヴァーしたものだが、マイケルはここで大人にはわからない子供の心情を吐露していた。それから20余年を経て発表した“Childfood”では失われた少年時代を探し求めていた。マイケルのそんな姿は痛々しくも美しく、リスナーの胸を打つ。ジャクソン5のモータウンからの最初のシングル“I Want You Back”には〈Oh, baby, give me one more chance〉という名フックがあるが、思えばマイケルは何度か〈チャンスをもう一度〉とも歌ってきていた。J5の70年作『ABC』で披露した“One More Chance”、そして結果的に生前最後のシングルとなってしまったR・ケリー作の同名異曲“One More Chance”。実のところそれらは愛を乞う歌であるのだけど、充ち足りない何かを追い求めながら未来に向かっていくような、その切なくも清々しいヴォーカル・パフォーマンスにわれわれは魅了されてきたような気がする。

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