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特集

LONG REVIEW――電気グルーヴ『20』

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2009年08月26日 18:00

更新: 2009年08月26日 18:22

文/佐藤 譲



  8年ぶりのリリースにも関わらず、驚くほどすっきりコクのあるサウンドと無意味と意味の間をフラフラする電気節全開の歌詞でファンの溜飲を下げた『J-POP』。そして、半年というまさかのインターヴァルでリリースされ、〈ふざけ足りなかった〉という『J-POP』以上にふざけ倒した結果、電気グルーヴらしさを超えてケレン味なき快感を手に入れた『YELLOW』。

 久々に一線に復帰して以降の電気グルーヴは、どこか大人の余裕を感じさせながら、〈これが大人のやることか(笑)!〉とゲラゲラ突っ込みたくなってしまうようなおもしろさに溢れている。例えるならば高田純次、あるいは赤塚不二夫ばりの軽妙で奔放な変態に進化(むしろいい意味で退化?)したと言えるのではないだろうか。

 で、だ。そんな〈平熱でも変態〉である彼らが、節目の年の最新アーティスト・イメージを電人ザボーガーにしちゃうような彼らが、20周年を記念したアルバムでこれまでのキャリアを真面目に総括してみちゃったりするんだろうか?

 いやあ、しないんじゃないかなあ(棒読み)。

 というわけで、電気グルーヴの最新作『20』はベスト盤や記念編集盤ではなく、なんと全編新曲のニュー・アルバム。自分たちへのご褒美とばかりに、気合いを入れて、これまでのどの作品よりも力の抜けた遊び心溢れる作品に仕上げている。なんせアルバム中もっともド派手でアンセミックな楽曲が、瀧のライフワークである体操シリーズ最新作“ピエール瀧の体操42歳”なのだからして、そのバカバカしさは推して知るべきだろう。

 『J-POP』『YELLOW』の延長線上にあるすっきりコクのあるトラックメイク。サウンドは“何枚だ?”“ポンコツ幻想曲”“猫とイスラエル”などのジャーマン・ニューウェイヴ、〈つづれおり〉を思わせる美しいシンセの響きが心地良い“フォックス”やディスコ・フレイヴァー満載の“エキゾティカ”、エキゾなホーンからハッピーなレイヴ・サウンドへと怒涛の勢いで雪崩れ込む“ピエール瀧の体操42歳”といったテクノなど多岐に渡る。また“電気グルーヴ20周年のうた”や“タランチュラ”、80年代アーバン歌謡といった趣きの“エンジのソファー”では妖しくメロウな歌謡曲の旋律と、彼らのDNAに刻まれた音楽性が自然と抽出。全編に配されたますますくだらなく意味深な日本語詞と共に豊かに溶け合っている。いい湯加減であり、いい融加減。力が抜けているがゆえに、結果としてわれわれが欲している電気の魅力が余すところなく凝縮された形となった。

 ちなみに初回限定盤にはいろんな意味でショッキングな天久聖一、宇川直宏、ピエール瀧によるPVの他、リミックスとカラオケ・ヴァージョンのボーナス・ディスクも収録。マイペースに、バカバカしく、いかがわしく、電気のショウは続いていく。

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