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カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年08月05日 18:00

更新: 2009年08月05日 18:03

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/岡村 詩野

新人・矢沢永吉の登場です!?

  よもやここまで開かれているとは! 会った瞬間の緊張はともかく、話を進めれば進めるほど、あきらかにこの男のなかで何かが変化したことが確信として伝わってくる。そう、言ってみれば、〈矢沢永吉、再デビュー〉。現在の彼はリフレッシュしていて瑞々しく、そして何より柔和で柔軟だ。これまでの輝かしいキャリアに甘んじることなく、また大御所という立場をいたずらに振りかざすこともない。このたびリリースされるニュー・アルバム『ROCK'N'ROLL』は、そんな〈新生・矢沢〉を高らかに告げるステートメントのような一枚だ。

 「よく〈充電する〉とかって言いますよね、アーティストによっては。でも僕は35年くらいやってきて、そんなこと考えたことなかった。止まったことがないんですよ。でもね、ふと思ったんです。このへんでちょっとあたりを見てもいいんじゃない?って。あと、武道館(ライヴ)を100回やったというのも自分のなかでひとつの節目になった。だからこそちょっとあたりを見てみようって思えたんだよね。でもね、そうやって少し止めたからこそ今年に入ってやるべきことがはっきりしてきた。結局、俺は音楽が好きでライヴが好きで、それで十分なんだってわかったね。正直、俺には音楽以外に何かないわけ?って思ってた時期もあったよ。音楽ってつまんないな、飽きたなって思った時期もあった。おまけに俺は周囲のことにあまり関心がないでしょ。音楽もあんまり聴かないしさ。もちろん、それが矢沢の良さでもある。だから、あたりを見るっていってもそれは周囲のミュージック・シーンを見たいって意味じゃなくて、自分自身がいまどうなの?っていうのを確認したいってことだった。でも結果としてそうやって少し止めたことが大きかったね」。

 決してこれまであぐらをかいていたわけではないだろう。だが、どこかで自分自身を特別扱いしていたのかもしれない。いや、気がついたら周囲に〈雲の上の人〉に祭り上げられてしまっていたのか。それほど、矢沢永吉はそれだけの功績を残してきたミュージシャンということだ。

 「もうひとつ大きかったのは、サマー・フェスティヴァルに出たこと。2006年に〈ROCK IN JAPAN〉に出たんだけど、あれが自分を大きく変えたね。正直、それまで出たいなんて思ったことなかったよ。矢沢が出るところじゃないでしょ、若い人が出るところでしょってね。日本のミュージック・シーンなんて関係ないねって。違和感があった。でも、違ったね。音楽ってエイジ関係ない、国境関係ないっていままで言ってきてたのに、何で否定してたの?って思った。実際出てみたらすごい反響だったの。最初は〈矢沢永吉なんて何で出すの?って思ったんだけど、何気なく観てブッ飛びました!〉〈このパワーはどこから出るの?って思いました〉ってそんな反響ばかり。で、こっちもすっかり味しめちゃってさ(笑)、翌年も出ちゃったもんね、サマー・フェス」。

 そんなリラックスして開かれた空気が、自身の新たなレーベルから初めてリリースされるオリジナル・アルバムに、ダイレクトに表れているといえるだろう。何といっても、楽曲がどれもラフ。基本的にはここ最近の作品の延長線上にある、わかりやすくてオーソドックスな男気のあるロックンロール・スタイルに変化はないが、決めのリフやドラマティックな展開に一切頼らず、何となく音を出しているうちに出来上がったとでもいうような、良い意味での緩さと隙がある。まさに彼が広島に住んでいた10代の頃、初めて衝撃を受けて東京までライヴを観に行ったというビートルズの初期作品のような、シンプルで飾り気がなくて、でも荒々しさと無骨さと勢いとガツンとした手応えのあるロック・チューンばかりだ。

 「(親指を立てて)嬉しいねえ、そう言ってくれるの。実際、今回のアルバムの曲はギターを手に取って何気なく弾いて生まれた曲ばかりなの。最初はちょっと思ったよ、矢沢のアルバムとしてこんなラフでいいの?ってね。でも迷いはなかった。これが矢沢なんだからってね。それにいまは音楽が楽しくて仕方がない。俺、音楽があって本当に良かったって思うからね。続けてきて良かったって心から思うよ。だからいまは、ぜひ多くの人にいまのこの矢沢を見てほしいね」。

 矢沢永吉、今年の9月で60歳。だが今年もいくつかの夏フェスに登場する。そう、間違いなく新人気分で。

▼矢沢永吉の作品を紹介。

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