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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年08月05日 18:00

更新: 2009年08月05日 18:08

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/出嶌 孝次

赤毛も逆立つエレクトロ・ショック!!


  キツネからリリースしたデビュー・シングル“Quicksand”が絶賛を浴び、続くシングルの“In For The Kill”が全英2位、そして“Bulletproof”で見事にチャートを制した2人組、ラ・ルー。ユニット名はフランス語で〈赤毛〉を意味するそうだが、結成は南ロンドンでメンバーのエリー・ジャクソン(ヴォーカル)とベン・ラングメイド(プロデュース)はいずれも英国人。実は「最初からポリドールと契約していたけど、何となく現地産の雰囲気を出したくてキツネからデビューしただけ」……なんて余計なことまで話してくれるのは、ユニット名の由来にもなった赤毛のエリー。このたびファースト・アルバム『La Roux』を完成させ、「スタジオを一歩出れば、ソロ・プロジェクトって感じ」とも語る彼女に話を訊いた。

──コンビを組む前はそれぞれどういう活動をしてたんですか?

「ベンは90年代にはDJをしていて、私と出会った頃は、ちょうどいっしょに音楽をやる相手を探していたところだったわ。私は学生だった」

──エリーさんがそれ以前から書いていた曲ってどんなものだったんですか?

「幼い頃、曲を作るために私が持っていた唯一のものは、アコースティック・ギターだった。6歳の頃からアコギを弾いているの。アルバムの曲の多くもギターで書いたものが多いわ。ベンと会う前に作っていた曲はもっとフォーキーだったから、いまとは全然違うわね」

──結成の経緯は?

「意図的なものじゃなくて、自然と組んでしまった感じね。5年前にパーティーの席で友達から〈君は素晴らしい声をしているから、ベンといっしょにやってみるといいよ〉って言われて、会うことにしたの。実際に会ったら気も合ったし、私の曲やメロディー、ヴォーカルも気に入ってくれたしね。私はまだ学生だったから、週に1度ぐらいいっしょに曲を作るようになったのよ。最初に“Fascination”を書いて、それから独自のサウンドも出来てきたから徐々に仕事として真剣にやるようになって……そして、気がつけばレコード契約も手にし、アルバムまで作ってしまったわ。何だかクレイジーって感じ」

──ベンの第一印象はどうでした?

「……あんまり覚えてないや(笑)。凄く優しい人だな~とは思ったわね。凄く励ましてくれるし、ポジティヴでやる気に満ちた人だと思った。(ベンのあなたへの印象は?)シャイだと思った、とは言ってたわね……っていうか、ベンに訊いてみてよ(笑)」

──ラ・ルーの曲からはパンクやインダストリアルから伝統的な英国ポップスまでいろんな影響が感じられますが、実際にはどんな音楽の影響が強いと思いますか?

「幼い頃はマイケル・ジャクソンの大ファンだった。マイケルの死はポップ・ヒストリーの重大事だと思ったわ。マイケルみたいなアーティストは、もう決して現れないと思う。私の(将来産む)子供たちが生きているマイケルを見ることができないなんて、何だか凄く奇妙な気分になる。他にはアニー・レノックスにスティーヴィー・ワンダー、デヴィッド・ボウイ、プリンス……あとはジェネシスにも影響されてる」

──そのアニー・レノックスがいたユーリズミックスや、マドンナ、あるいは最近のレディ・ガガあたりと比較される機会も多いようですけど。

「アニー・レノックスについては理解できる。でも、マドンナとレディ・ガガについては、なぜ比較されるかわからないから奇妙な気分よ。マドンナにインスパイアされた部分はあるけど、レディ・ガガなんて最近の人なんだから、影響されようがないわ(笑)。ユーリズミックスにインスパイアされた恐らく最大の部分は、エモーションのあるエレクトロニック・ミュージックを作っていたってところね。彼らが見事なのはシンセサイザーと感情を組み合わせることができたってところ。アルバムの制作中もベンはアニー・レノックスを参考にしてたし、ユーリズミックスをよく聴いた。曲の構成やメロディー、さらには率直さがいかに脆弱なものであるかを学んだわ。率直さと脆さは(曲を作るうえで)非常に重要なものなのよ」

──シングルの連続ヒットは予想外でしたか?

「えっと、どんなアーティストも自分のやっている音楽にはある程度自信を持ってると思う。私はアンダーグラウンドで、ベンもアンダーグラウンドな音楽を作ってた。そして私たちはアンダーグラウンドな安定感のあるポップ・ミュージックを作った。ラジオを聴いても自分たちの好きな音楽がかからないから、自分たちがラジオで聴きたい曲を作ろうって思っていたわね。皆も聴きたいと思ってくれるだろう……って。それでも実際に何がどうなるかはわからないものよ。“In For The Kill”があんなに売れて、15週もチャートに留まるとは思ってもみなかったし」

──アルバムを聴く限り、先行シングル以外の新曲はよりソング・オリエンテッドな雰囲気になってましたね。

「ああ、そういう路線は当初からやりたいと思っていた方向性だから、初期に書かれた作品も多いの。例えば“Growing Pains”や“Amor Love”なんかはそうね。私たちはバランスの取れたポップ・アルバムを作りたかったの。素晴らしいポップ・アルバムってダンサブルなシングル曲とよりソフトなトラックが織り交ぜられてるでしょ。例えばマイケル・ジャクソンの“Girlfriend”なんて、シングルとは全然趣が違うじゃない? それと同じこと。私は自分のサウンドをポップ・ミュージックだと思ってる。確かにいろいろなジャンルにインスパイアされていて、エレポップっぽくもエレクトロ・ハウスっぽくも聞こえると思うわよ。でも、最終的にはシンプルに〈ポップ・ミュージック〉と表現できるものだと思う」

──エレクトロっぽいビートで歌う女性アクトが多いと思うんですけど、そのなかでエリーさんしか持っていないものって何?

「その質問はなかなか難しいわ。どう答えようと、高慢ちきで鼻持ちならない女に聞こえるじゃない(笑)? でも、そうね。皆が共感できる楽曲を作れること……だといいな」

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