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2人の実力派DJが語る、ジャパレゲの現在と未来……

  共に29歳、共にDJ歴12年。ハードコア・スタイルを貫き、日本レゲエ界のブラックネスをキープしてきたRUDEBWOY FACEとHIBIKILLA。前者は『BOB』、後者は『BE FREE』という名のニュー・アルバムをこの7月に発表し、ますます勢いを加速させている。ここでは、そんな2人のスペシャル対談をお届けしよう。

――そもそもの出会いは?

HIBIKILLA「99年。池袋のBEDでしたね。ラバダブでRUDEBWOYが突然クラッシュを仕掛けてきまして。初対面でDJクラッシュ!」

RUDEBWOY FACE「うまく噛み合わなかったけどね(笑)。仲良くなったのはそこからですね」

――普段から〈最近のレゲエ・シーンは……〉とか話したりしますか?

H&R「ない、ない(笑)」

――じゃあこういう席は珍しいんですね。さっそくですが、昨今取り沙汰されているチャラレゲ(チャラいレゲエの略)についてどう思いますか?

R「否定はしないけど、俺がやるべきことじゃないし、チャラレゲがいまのシーンを作ったわけじゃない。これは間違いなく言えること。先輩たちが作ってきたものに〈大人〉がズルしてフニャフニャしたものをくっつけて、それを世の中に出してるだけでしょ? 黒さがない。レゲエはブラック・ミュージックだから、例え日本人がやっても黒さがなかったら偽物だと思うんですよ。俺はゲットーでビーニ(・マン)とバウンティ(・キラー)がクラッシュしている映像に物凄いショックを受けて、それでレゲエが好きになった。だからそういう黒い部分を追求していきたいんで……」

H「レゲエはユートピアを歌うものだと誤解されている風潮がポップ・フィールドにはありますけど、デストピアのなかにある希望を歌うのがレゲエじゃないか、と言いたい。俺はアルバムで必ずコンシャスな内容の曲を入れているし、そういう意味でも偉そうに言う資格はあるんじゃないかと思っちゃいます。そもそもレゲエは理屈っぽい音楽だからさ。だってボブ・マーリーやピーター・トッシュの曲名なんて〈400年〉とか〈解禁せよ〉だよ」

R「普通の人からしたら、お近付きになりたくないようなね(笑)。歪んでいようが偏っていようが自分の思想を曲げずに反抗していく、それがレゲエの本質。でもいまのメインストリームのジャパレゲは、キャッチーなノリですべて終わってる感じがする」

H「広がるにつれて本質を理解しない人が増えてしまったんだろうね。そこはレゲエを取り巻くジャーナリズムの不健全さも影響していると思う。褒め褒め雑誌が多すぎますよ」

R「この前取材で、〈今回のアルバムより1枚目が好きだ〉って言われたんだけど、俺はそういうふうに率直な意見を聞かせてらえたほうが嬉しいかな。ライターが褒めるところを探さなきゃいけない状況に疑問を感じてる」

H「レゲエが好きだからこそ愛のある批評があってもいいよね。なんでもかんでも褒め倒してたらリスナーの耳も育たないですよ」

R「そう、リスナーの耳が若いっていう問題もあるよね。HIBIKILLAみたいなガツンとしたリリックがまだ届いてない気がする。そこは俺たちがもっとエデュケートしていかないとだめだと思うけど」

――エデュケートという面では2人の作品はかなり威力があると思います。リリックだけじゃなく、いわゆる黒さが出たオールド・スクールな歌い回しとか。

H「でも、それぞれ採り入れているオールド・スクール観には違いがあるんですよ」

R「俺は80年代の、コンピュータライズドされはじめた時期のダンスホールがいちばんグッとくるんで。バウンティとかビーニとか。HIKIBILLAはもっと前の時代だよね」

H「そう、俺はビッグ・ユース、U・ロイ、デニス・アルカポーン……トースティングというDJスタイルですね。それにしてもRUDEBWOYの“Deejay Deejay”なんて、あれはかなりのラガじゃないと聴けないですよ(笑)。ほとんど呪文です、呪文」

R「俺が作りたいのは、ダンスの現場でマヴァードの次にも自然と繋げるようなカッコイイ曲。いまは何かとビッグ・フェスに話題が集中しがちだけど、やっぱり俺にとってメインの活動拠点、発信源は地下のダンスホール(=クラブ)だから」

H「ダンスホールがシーンの中心であってほしいけど、いまはそうじゃない気がする。そういう意味ではレゲエが一般社会に浸透したと言われますが、実はまったく浸透していないんじゃないかって思いますよ」

――確かに。でも深部に迫る入り口はすでにあるかもしれないですね。

R「だから、これからは掘り下げていく作業を導いていければいいなと思いますね。難しくてわかんないよって言われたら仕方ないけど、何が本当にカッコイイのかわかればもっとおもしろいと思うし、リスナーが厳しくなればイケてる奴がウケて、つまらない奴は消えてくだろうし」

H「広めていく作業は上の世代がやってきたことで、いま俺らは引き継ぐ立場にいると思う。それこそジャマイカン・ブギから続くジャマイカン・ミュージックの歴史の最先端であると同時に、フォーク・ソングの時代から続く日本のレベル・ミュージックの現在進行形にもいるわけですからね。ボブ・マーリーの曲はジャンルがどうとかでなく音楽として成立しているじゃないですか。やはりそこを目標にしていかないと。ハードルは高いけど、そのくらい意識高くいこうぜって話ですね」。             

▼RUDEBWOY FACEのアルバムを紹介。

▼HIBIKILLAのアルバムを紹介。

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年07月29日 19:00

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/岡部 徳枝

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