Terukado × 出嶌孝次(bounce編集長)
文字数が多くてスミマセン! Aira Mitsukiの新作リリース記念ということで、記名性と匿名性が異様に高いプロデューサーのTerukadoと、bounce編集長の出嶌孝次が超ロング対談を敢行! この〈Terukado 解体新書〉を紐解けば、『PLASTIC』の全貌が……いや、ガールズ・エンターテイメントの明日が見えてくる!?
音楽制作は企業秘密なチーム型の場合も
――Terukadoさん自体が表舞台に出てくることが少ないので、読む人からするとまず何者なのか知りたいと思うんですよね。
「難しいですよね。どう見られてるんでしょうかね。逆に言うと。そこが知りたいですね。例えばメーカーの人たちとか、お仕事させていただいてる人たちってのは、時にマネージメントやレーベルのトップだったり、クリエイターだったりプロデューサーだったりとか、捉え方は違うと思うんですけど、媒体の方々っていうところでいくと、デジマさんからどう見られてるのかなってのがすごく知りたいですね」
――僕は……本当にいるのかどうかっていう(笑)。
「それいい(笑)。いなかったみたいな(笑)、今回の記事のオチで」
――記名性があるんだけど、匿名性が強いというか。名前がいろいろあったりするのも含めて、自分の存在をどう見せたいのかな、と思いますね。
「こう見せたいって考えると、自分がアーティストになっちゃうと思うんですね。裏方じゃなくなるじゃないですか。自分がもう一回アーティストをやるんであれば、そういったブランド・マネージメントも大切ですけど、裏方なのでできるだけ下がりたいってのがあるんですよ。基本として。特に僕の関連しているアーティストの人たちってのは、自分でモノを作らないじゃないですか。自分がどんどん出ていって、彼女らの存在が霞んでいくのは違うなと思ってて」
――〈Produced by Terukado〉って書きつつも、Terukadoさん自身の作品になっていくのは嫌だということですね。
「基本的にはそう考えてますね。自分が出てもなあっていう。Aira Mitsukiが表に出て、Airaが認知されて初めて楽しいことじゃないですか」
――ただ、もともとはミュージシャンとしてデビューして、表に出てた人じゃないですか。そこの部分の意識の切り替えって何かあったんですか。
「ひとつは、いままで楽曲提供をしてきたアーティストで自分より凄い人たちがいっぱいいたからですね。あと、何より裏方に下がることで、音楽に対してプロフェッショナルでいようと思うようになって、自分は露出せず、音楽だけを一人歩きさせるようにしてきました」
――ビーイングに属して、いろんなアーティストに曲を提供されて、傍目には凄い実績だと思うんですけど。そのままその土壌の上でやっていこうとは思わなかったんですか?
「商業的な結果っていうのは人のふんどしを借りて獲れたものであって。作曲家をやっている以上、例えばゴールド・ディスクを貰えたり、紅白歌合戦で披露されるような曲を書くんだ、ってのがひとつの最終形だったりするんですよね。それを達成したとき、もっとこう精神的な満足感とか、逆に興奮だったりとかがあると思ったんですけど、意外にそうでもなくて。そのとき〈何でだろう?〉って考えたら、やっぱり自分の力で獲ったんじゃないもんねって思ったんですよ。ビーイングってバックボーンがあって、アーティストのパワーがあって、自分はそこに曲を提供しただけだって。制作の力は非常に非力だなって思ったんですよ、当時は。それを続けたらお金は入ってくるかもしれないけどそういうことじゃないでしょ、って。じゃあ、自分が満足いけるところまでやってみようと思って、いまに至ります」
――昨年のインタヴューでも話してもらった繰り返しですが、目標がモータウンのベリー・ゴーディJrとビーイングの長戸大幸さんということで。いち音楽家でもありつつ、もっと大きなものを見る立場が目標、っていう意味ですよね。
「そうですね」
――モータウン的な、ファクトリー的なものに対して憧れみたいなものがあるって仰ってましたけど、制作組織的にそれが理想ですか?
「そうですね。僕プラスαぐらいでやってると、送り出せる限界が出てくるじゃないですか。もっとたくさんの作品やアーティストを送り出したいですよね」
――いまは音楽制作ってほぼ一人でやられてるんですか?
「特殊な形でやっています。(中略)昔からアーティスト、作曲家、アレンジャーと段階を踏んできているので、もともとは一人完結型でやっていました。いまはケースバイケースで、自己完結型のものもあれば、Terukado的なメソッドに基づいたチーム型の場合もあったり、今回の『PLASTIC』でいうと□□□やShigeo君にやってもらったみたいに、作曲はこっちでアレンジは外部みたいなケースもあるし」
──中身は企業秘密っぽいですね。僕はもっとドクター・ドレーみたいな感じかクインシーっぽい感じと思ってましたが、そうでもないっていうのがおもしろいですね。
「もっと音楽をやっていたいんですけどね。さっきの〈自分は裏方〉って話とテレコになっちゃうんですけど。いま31歳なんですが、一回りしてまた歌がやりたいんです。もう一回歌いたいっていうのは凄くありますね、時間とか環境が許してくれるかわからないんですけど」
──具体的に許される状況になるんでしょうか?
「します(笑)」
──じゃあ、もう時期的なメドもある程度は思い描いてる?
「こういうのは出会いだったりするので、例えばユニットを組んで、自分がいなくても成り立ってやってもらえるようななかで歌えたりしたらいいですね。凄く羨ましいなあって思うのは、小林武史さんがやっぱりツアーの最後でピアノ弾くみたいなことって、あそこにこだわりがあって、ミュージシャンとしてのプライドを凄く感じるんですよね。ああいったなかで僕がやっぱり自信があるのは歌。それこそデジマさんの好きなブラック・ミュージック系の歌なんですけど。僕はソウルやR&Bを歌わせたらピカイチだと自分で思ってるんで(笑)」
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