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主人公にとっての文化祭の舞台は、ボブ・ディランにとってのニューポート・フォーク・フェスだった!?――主人公が憧れるディランの〈ロック転向事件〉

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2009年07月08日 18:00

文/桑原 シロー

 65年のニューポート・フォーク・フェス。舞台に登場したボブ・ディランは待ちわびたフォーク・ファンを前にし、いきなりエレキ・ギターを掻き鳴らし、喧しいブルース・ロックをぶちかました。見物人らは騒然となり、やがてブーイングを飛ばしはじめた――というなかば伝説的なエピソードがあるが、この有名なディラン〈ロック転向事件〉は、彼が〈ロックな男〉であることを象徴する最たる逸話でもある。

 ディランが叫ぶまで、文学性/社会性の高い歌詞を持つフォークと主に10代が支持するダンス音楽であるロックンロールは別世界に生きていた。両者を組み合わせれば、音楽表現の可能性は広がるはず。そう真摯に考えたのがディランであり、彼はフォーク・ロックの父となる。その後にジョン・レノンなどのロック詩人がディランの後を追うような曲作りをはじめ、ロックのフィールドは拡大していった。

 先のフォークの祭典を通じてディランは〈時代は変る〉というメッセージを放った。みずからを晒すようにして、である。事実、その後急速にロックを中心とした音楽シーンは変動し始める。そして〈ロックとはみずからを晒すことである〉というテーゼが定着するのだった。壁を突き破るためにエレキを鳴らせ――そんなディランのメッセージは今日も世界中の空に響き渡っている。

対談のなかで語られた作品たち

『The Freewheelin' Bob Dylan』Columbia/ソニー(1963)

デビュー時は〈フォーク界のプリンス〉と目されていたディラン。豊かな才能を嫌というほど見せ付けるこの2作目を聴けば、その話がすごく納得できる。 “Blowin' In The Wind”をはじめ、生まれながらにしてスタンダードの趣を持ったフォーク・ナンバーを独特なしゃがれ声で歌う彼にはプリンスというよりもキングの風格を感じる。

『Another Side Of Bob Dylan』Columbia/ソニー(1964)

プロテスト・フォークの旗手としてシーンから大注目を浴びていたディランがくるりと向きを変えて、内なるリアルな問題を歌おうと試みた4作目。ラヴソングも多く、ファンからは〈軟派になった〉などという揶揄の言葉も飛んだりしたようだが、複雑で凸凹した内面をシリアスに炙り出そうとするここでのディランの姿は実に硬派だ。

『Bringing It All Back Home』Columbia/ソニー(1965)

〈ロック・ディラン〉の誕生を告げた5作目。アルバム前半はエレクトリック楽器をフィーチャーした騒がしいフォーク・ロック曲が並び、当時のリスナーに多大なショックを与えた。マシンガン並みの速さで言葉を吐き散らす冒頭の“Subterranean Homesick Blues”ほか、聴き手の胸ぐらを掴んで振り回そうとするワイルドな曲が揃っている。

『Highway 61 Revisited』Columbia/ソニー(1965)

“Like A Rolling Stone”、並びに本作の登場によってロック史は〈ディラン以降〉という項目を作らざるを得なくなった、そんなマスターピースである。難解でミステリアスな詩表現と、熱っぽい混沌としたサウンドが見事に合致。それまでのロック・アルバムには体得しえなかったダイナミックなスケール感が創出されている。

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