スペシャル・ロックンロール対談! みうらじゅん×渡辺大知(黒猫チェルシー)
ひと夏の経験を通じてささやかな成長を遂げる男子高校生の姿を描いた青春映画「色即ぜねれいしょん」。その原作者と主演俳優――つまり、2人の主人公とも言えるみうらじゅんと渡辺大知(黒猫チェルシー)をゲストに迎え、bounce.comではスペシャル対談を敢行! 映画の鍵を握る〈ロック〉を切り口に繰り広げられた、濃厚なトークを大公開します!!
高校生って微妙なライン
――今回、渡辺さんは主人公の乾純を演じていますが、彼はどんな男の子だと思われましたか?
渡辺大知「いろいろカッコ良いことに憧れていて、そういう憧れとかはすごい持ってるんですけど、やっぱりどこかで〈自分はそうじゃないなあ〉とか思ってるとこもあって。〈僕はこうや〉って、ちゃんと決めている。そういうことはしっかり考えてる人やなと思いました……というか、これって、みうらさん(について語る)ってことですよね(笑)」
みうらじゅん「いやいやいや、違いますよ、そうじゃないですよ(笑)」
――自分と純を比べて、〈似てるなあ〉と思うところはありましたか?
渡辺「それはあります。いろいろ考えちゃったり、モヤモヤしてるのもわかるなあって。カッコつけたいけど、やっぱり人の目とか気にしちゃうし。例えばファッションも、大人っぽい格好をしすぎると〈カッコつけすぎや〉って思われるし、中学生みたいな服装してたら〈子供っぽい〉って思われる。高校生って微妙なラインじゃないですか。大人になりたいのと子供でいたいのの間の時期というか。大人なのか子供なのかずっと考えてて、そのモヤモヤ感がすごいわかる。そういうところに共感しました」
――みうらさんは、映画の純を見てどう思われました?
みうら「俺も自問自答をずっと続けてきて、結局、結論なんてまったく出なかったですね。なんかすごく表現したいんだけれども、どう表現していいかわからなかったから、むやみに曲作ったり、むやみに文章書いたり。自分で考えた答えが合ってるのか、間違っているのかもわからないし。それですごく悶々としてた。オレが高校の頃、オカンは〈この子は一体何をしてるかわからへん〉と言ってたからね(笑)。ホント、どう表現したらいいかわからなかったですよ。それこそ自分探しみたいなことをしてたのかもしれないけど、結局わからなかった。でも年を重ねて、自分を少し諦めた時に、やっと自分のことがわかった。高校の頃は無限に広がる可能性があると思ってたから、自分の可能性に○ばっかりつけて頭いっぱいになってたけど(笑)、可能性がないほうに×を付けていったら、残ったのが仕方なく自分だったんだよね」
――そのモヤモヤ感は映画にも出てましたね。
みうら「そうですね。当初の目的のフリーセックスの話から、最後の結末は違ってきてるしね。もういろんなことが交錯して、最初のエッチをする話ではなくなって違う出口に出ちゃってる」
渡辺「最終的にヤンキーとバンドやることで終わってますからね(笑)。ずっと片思いだった人とはデートもできないし」
みうら「全然うまいこといかへん(笑)」
渡辺「今回の出演者の方が、みんなモヤモヤしてたり、いろんな考えを持ってる人たちだから、こういう感じの映画になったのかなって思います」
――70年代の京都が映画の舞台になっていますが、まだ渡辺さんは生まれていない時代ですよね。映画で経験した70年代はどんな感じでしたか?
渡辺「原作を読んだ時もそうだったんですけど、70年代というのは全然意識しませんでした。服装とかは違うかもしれないですけど、いまの僕でもすごく共感するし。時代の違いを感じさせないというか、〈どんな時代でも変わらないんだな〉ってすごく安心しました。撮影も映画の時代背景にこだわってないじゃないですか。例えば食堂で注文するシーンで、よく見たらワックスで髪の毛を立ててる人とかがいるんですよ、何人か(笑)」
みうら「それは失敗だったかもしれないね(笑)」
渡辺「(笑)だから、いまの僕よりもっと若い人が観てもすんなり入っていけるというか。僕は自然に脚本を読めたし、自然に演技ができた」
――でも70年代っぽい風俗、例えば映画に出てきたロック喫茶なんてどうですか?
渡辺「行ってみたいですね。ジャズ喫茶は地元にあって、よく前を通ってました。演奏してるのが窓から見えて、〈おお~〉みたいな。でも、この映画ではユースホステルの温かい感じが良かったです。僕も小学校の頃に、そういう施設で初めて会う人と共同生活をするということをやってたので映画でもすごく共感しました。あのキャンプファイヤーの感じ。脚本を読んでて、すごい頭に浮かびましたもん。僕もキャンプファイヤーの周りで自己紹介したりしてましたから。みんなで、あだ名つけあったりとかして」
みうら「全員あだ名ついてるんだ(笑)」
――渡辺さんはどういうあだ名だったんですか?
渡辺「何回か付けられたんですけど、いちばん最後のだけ憶えてて、〈オニヤンマ〉(笑)」
みうら「なんでやねん(笑)」
渡辺「トンボがすごい好きやったんですよ。ていうか、いまでも好きなんですけど」
みうら「それって、自称あだ名?」
渡辺「人に一回つけられて、それが気に入らなかったから〈もっと違うの、つけて〉って言って。〈じゃあ、さっきトンボが好きって言ってたからトンボで〉みたいな感じで」
みうら「で、オニヤンマ(笑)」
渡辺「〈トンボで何か〉みたいな話になったんですけど、僕が〈それやったらオニヤンマとかのほうがいいな〉って。そやから、一応自称です」
みうら「トンボよりはオニヤンマのほうがカッコ良いもんな」
――みうらさんは当時ロック喫茶へは?
みうら「行ってました」
――やっぱり、映画みたいな雰囲気だったんですか?
みうら「あんな感じです。僕が行ってた京都の白梅町にあったロック喫茶のママは、眉毛剃っててデヴィッド・ボウイの『Aladdin Sane』(のジャケット)みたいで(笑)。そのママがすごい大人に見えて、〈フリーセックスかな~〉と思ってた。なんかアングラの匂いのする人だったし。でも、(小説は)ノスタルジーで書いたつもりはまったくて、郷愁とかは全然ないんですよね、昔から〈あの頃は良かった〉って思ったことは一度もないし、昔には二度と戻りたくない(笑)」