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WE ARE DANCING TO THE DREAMY MELODY なぜいまコステロはふたたびナッシュヴィルへ赴いたのか?

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年06月24日 18:00

更新: 2009年06月24日 18:29

ソース: 『bounce』 311号(2009/6/25)

文/岡村詩野

  いちばん好きなコステロのアルバムは『King Of America』(86年)という筆者のようなファンは、ふたたびT・ボーン・バーネットと組んだニュー・アルバム『Secret, Profane & Sugarcane』の内容におそらくかなり心酔していることだろう。何しろ、地元アーティストを従えてのナッシュヴィル録音。さらにはエミルー・ハリスやジム・ローダーデイルの客演曲、ジョニー・キャッシュに提供したナンバーのセルフ・カヴァーやロレッタ・リンと共作曲、はたまたパティ・ペイジの歌で知られるスタンダードなどが含まれた、〈コステロ、久々にアメリカ・カントリー/フォーク探求の旅に出るの巻〉と呼ぶに相応しい一枚となっているからだ。

 久々というのは他でもない、エルヴィス・コステロはこれまでにも『Almost Blue』(81年)、そして前述の『King Of America』という共にカントリーにアプローチしたアルバムを発表してきている。前者は今作と同じナッシュヴィル録音、後者は今作同様T・ボーン・バーネットがプロデュース。定期的にこうした作品に挑むことで、彼は自身のなかにあるカントリー魂のようなものと向き合おうとしているのかもしれない。

  しかし、わずか3日で録音を終えてしまったというこのアルバムの仕上がりは、ほとんど休む間もなく異なるタイプの作品を次々と発表し、常に〈世界〉と対峙したところで自身の音楽性を深化させている現在のエルヴィス・コステロだからこそ作れた一枚と言える。すなわち、ヴェテランが年齢相応に枯れた風合いのアルバムを出したというものなんかではなく、例えばフリート・フォクシーズ、グリズリー・ベアといったフォーク~カントリーを含めたルーツ指向の明確な若手が全米規模でセールスを獲得している時代と符合しているのではないか、ということだ。プロデューサーのバーネットは、コーエン兄弟の「オー・ブラザー!」やジョニー・キャッシュを取り上げた「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」といった映画音楽にも積極的に関わっている、言わば若手とヴェテランとが呼応し合う重層的なシーンを支える存在。そのように近年またいい仕事をしているバーネットとコステロが再度組みたくなったのは、彼がいまのUSシーンで起こっている〈カントリー/フォーク再考現象〉に気付いていたからではないだろうか。日本盤のボーナス・トラックの1曲、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド“Femme Fatale”のカントリー・アレンジなど実に現代的だ。

 ところで、この新作はコンコードとスターバックスが共同設立したヒア・ミュージックからの発表であることにも触れておきたい。ポール・マッカートニーやジョニ・ミッチェルなどの作品をリリースしている、言ってみればコンサバなレーベルから、こうしたリベラルな一枚が届いたこともちょっとした事件なのだから。

▼ヒア・ミュージックの作品を一部紹介。

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