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HI, MR. GENTLEMAN! WHERE ARE YOU GOING? 蝶ネクタイにタキシードを着て……コステロさん、どちらへお出掛けですか?

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年06月24日 18:00

更新: 2009年06月24日 18:29

ソース: 『bounce』 311号(2009/6/25)

文/北爪啓之


  ビッグバンドのシンガーでもあった父親を持つコステロは、幼少の頃からスタンダード・ジャズ~ポップスに親しんでいたわけだが、しかしデビューから90年代までの活動のなかでその影響はさほど表層化してはいなかった。ところが稀代のポップ導師、バート・バカラックと全曲共作を果たし、普遍性を帯びた流麗なバカラック節に内省と皮肉を孕んだ歌唱を加えることで新たな自己表現を見出した傑作『Painted From Memory』(98年発表)以降、〈スタンダード〉への傾倒が目立ちはじめたのは確かだ。99年には映画「ノッティングヒルの恋人」の主題歌でシャルル・アズナヴール“She”のカヴァーをクルーナー風に歌い上げ、2003年の『The North』も全編まるでジャズ・ヴォーカル作品のように真っ向から〈歌を聴かせる〉風に仕立てている。余談だが、同年には奥方のジャズ・シンガー、ダイアナ・クラールの『The Girl In The Other Room』で6曲を共作していたりも……。

 こうした動向はみずからの音楽体験の原点に立ち返ったようでもあり、シンガーとしての希求によるひとつの道標のようでもあり、かつてトリビュート盤にも参加したジョージ・ガーシュインからバカラックへと至る〈大衆音楽マエストロ〉の継承者たらんとする心意気の表れのようでもある。10年後にはパンクもソウルもカントリーも自家薬籠中のものにした偉大な〈メガネ・マエストロ〉が誕生しているかもしれない。


シャルル・アズナヴールのベスト盤『She : The Best Of Charles Aznavour』(EMI)

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