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特集

Elvis Costello(3)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年06月24日 18:00

更新: 2009年06月24日 18:29

ソース: 『bounce』 311号(2009/6/25)

文/桑原 シロー

何をやってもコステロはコステロ!?

 89年、コステロは35歳。すでにヴェテラン・ロッカーと呼ばれる存在になっていた彼はワーナー・ブラザーズへの移籍第1弾『Spike』をリリース。ニューオーリンズ・サウンドにアイリッシュ・フォーク、妙ちくりんなファンクなどをゴチャ混ぜにしつつ、そこには不思議なトータリティーも生まれていて、この混沌こそがコステロ・ワールドと呼べる仕上がりに。〈もはや何やってもコステロ〉という気にさせられるが、とりわけポール・マッカートニーとの共作にはなかなかの驚きを与えられたものだ(ちなみにコステロは少年時代にビートルズ・ファンクラブに入っていた)。その『Spike』の続編的な内容の『Mighty Like A Rose』(91年)を経て、〈90年代は好き勝手やるぞ〉と言ったかどうかは知らないが、そんな意気込みを感じさせる作品群が続く。ブロドスキー・クァルテットとのクラシック・アルバム『The Juliet Letters』(93年)に、渋い選曲が最高なカヴァー集『Kojak Variety』(95年)、ビル・フリゼールとのライヴ盤『Deep Dead Blue』(95年)、アトラクションズとの『Brutal Youth』(94年)に『All This Useless Beauty』(96年)と、足跡を眺めれば80年代以上に激しい凸凹が浮かんでいる。

 96年に入り、ポップス系はマーキュリー、ジャズ系はヴァーヴ、クラシック系はグラモフォンから発表するという契約をポリグラムと結んだことも話題を呼んだ。そして届けられた、バート・バカラックとのコラボ作『Painted From Memory』(98年)では、表現力の深度を明確に浮かばせた仕上がりとなる。バカラックのドラマティックなメロディーラインを歌いこなしたことで得た歌い手としての自信は、映画「ノッティングヒルの恋人」の主題歌“She”(99年)でも十分に表れていた。

 〈創作意欲が溢れてしょうがない〉といった調子で、21世紀に入ってもリリースのペースを落とさず、疾走し続けるコステロ。バンド・スタイルによるロック・アルバム『When I Was Cruel』(2002年)、『The Delivery Man』(2004年)、アンネ・ソフィ・フォン・オッターとの共演作『For The Stars』(2001年)、そしてアラン・トゥーサンとの『The River In Reverse』(2006年)、ジャズに傾倒した『North』(2003年)、バレエ音楽集『Il Sogno』(2004年)とハイクォリティーな作品が届けられている。私生活では10年以上連れ添った元ポーグスのケイト・オリオーダンと別れ、2003年に人気ジャズ・シンガーのダイアナ・クラールと3度目の結婚。もちろん、そこからの影響もしっかりと作品に反映させていたりする。

 2008年の『Momohuku』はアトラクションズとのアンサンブルが思い出される、かつての〈コステロらしい〉ロック作品と評され、そして届いたばかりのニュー・アルバム『Secret, Profane & Sugarcane』では、ふたたびTボーン・バーネットと組んでナッシュヴィルでカントリー&ブルーグラスに接近。これまた〈コステロらしい〉との声も聞かれていて……。結局どんなアルバムも〈コステロらしい〉――世間ではそういう受け入れられ方が待っているのだ。これってやっぱり、ミュージシャンにとって幸せなことなんだろうと思う。 

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