最近のロックってどうよ……をトーキン・ロック!
※座談/岡村詩野、久保田泰平、冨田明宏、出嶌孝次
出嶌「今回この特集を組むにあたって、タワレコのスタッフやライターの皆さんに〈いま聴くべき日本のロック名盤〉みたいなアンケートをお願いしたんですが、その回答をまとめてみて思ったのが、ここ10年くらいの作品がすごい少ないってことで。回答者の年代も10代後半~40代以上までわりと幅があるはずなんですけど、最近のものがほとんど入ってなかった。ぶっちゃけ最近のロックでおもしろいものはあるのか?と」
岡村「2000年代以降のものが極端に少ないと」
冨田「まだ評価が定まってないのかもしれませんね」
出嶌「でも、出てくる時は積極的に評価しなくてもパッて出てくる気もするんですよ」
久保田「10年ぐらい前の余波がまだあるのかもしれない。ハイスタとかナンバーガール、くるりあたりの。そこからまた新しいエポックっていうものがそう生まれてない……っていうのは当時の音をリアルに喰らった者の意見だろうけど」
冨田「そもそも最近はアルバム単位で聴くっていう感覚がなくなってきてると思うんですよ。盤に対する思い入れが下がってきてる感覚を肌で感じてます。だからこそ総意になりづらいというか」
岡村「つまり楽曲単位で聴いてるわけですよね。作り手もそうなんでしょうか?」
久保田「もしかしたらそうかもしれない。いわゆる名盤っていうものを聴いてきてるとは思うけど、自分らがやるとなるとカタルシスの中心はそこじゃないんだろうね」
出嶌「それはそれとして昨今人気があるバンドの名前が入ってきてもいいと思うんですけど」
冨田「ちゃんとアルバムに世界観を持たせて作っている若いバンドがいないわけではないんですが、MP3時代の聴かれ方って楽曲単位で、しかもシャッフルして聴く人が多いからそういう作りのアルバムが増えたのは間違いないと思います。それに対するカウンターがちょっと起きていて、それがマヒルノとかYOMOYAみたいなバンド」
岡村「9mm Parabellum Bulletみたいなバンドはアルバム単位でその世界に埋没するような聴き方をリスナーに提示してない感じがありますよね。THE BAWDIESとか髭(HiGE)みたいなタイプのバンドはくるりとかスーパーカー、ナンバーガールのラインのリスナーが移行して聴ける、アルバムに気持ちを移入して聴ける体質な気がしたんです」
冨田「THE BAWDIESとかって洋楽好きがやるロック・バンドの文脈じゃないですか。最近はすごく日本ならではの音を志向するバンドが増えてて、実際に日本のバンドからの影響を公言している人もいる。でもTHE BAWDIESは僕たちが高校生の時にロック・バンドをやろうしてオアシスとかブラーをそのままコピーするバンドと近いっていうか。それって日本人のロックの聴き方、誤解や曲解も含めた日本人なりの洋楽の解釈がまだ生きてるということだと思うんです。そこからまた新しいロックが生まれる可能性もあるのではないでしょうか」
- 前の記事: 極私的名盤54(9)
- 次の記事: 最近のロックってどうよ……をトーキン・ロック!(2)