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特集

日本のロック・スタンダード・アルバム54(7)

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2009年06月03日 17:00

更新: 2009年06月03日 17:40

文/岡村詩野、加藤直子、北爪啓之、鈴木智彦、ダイサク・ジョビン、土田真弓、出嶌孝次、冨田明宏、宮本英夫

5>BOOWY

BEAT EMOTION EMI Music Japan(1986)

瓦解する直前のバンドだけが放つ、腐る前の美味な成熟が芳しい。西城秀樹と桑田佳祐を折衷したような氷室京介の巻き舌ヴォーカルに、全曲を書いてアレンジした布袋寅泰によるプラスティックなギター・サウンド、勝手知ったるビート・ロックのシングル群は貫禄の出来映えだし、T・レックスからトーキング・ヘッズまでキャッチーな趣味性も気安い力作だ。絶対に再結成しなそうで安心できる彼らとは裏腹に、そこから何の進歩もない音がいまも主流とされる2009年……。*出嶌

4>ゆらゆら帝国

空洞です ソニー(2007)

ミニマルなのにスウィート。エモーションを押さえ込んでいるのにストイックじゃない。無機質なビートなのに有機的。素っ気ないのに人情味がある。ロックの方法論に甘んじていないのにどうしようもなくロック。これはそういうアルバム。寡黙にして貪欲な男、坂本慎太郎は、誰もが躍起になって手にしようとするそういうアンビヴァレントな醍醐味をサラリとやってのけてしまうナチュラル・ボーン・オリジネイターだろう。いまいちばん格好良いロック・バンドは、他でもないこの日本にいる。それを証明した一枚。*岡村

3>椎名林檎

無罪モラトリアム EMI Music Japan(1999)

久々のソロ・アルバムを控えている彼女だが、本作が最初にあったことが何かの枷になっている気がしてならない。こういうシアトリカルな雰囲気には身構えてしまうはずが、“正しい街”の最初の叫び声がンアァーと聴こえてきた瞬間にギザギザになって抵抗できなくなるのは、何度聴いても同じ。鼻持ちならない自意識でミニマムな関係性を歌っているはずが、好ましい場末感とそこそこの清らかさに包まれて、それが普遍的なもののように聴こえてしまうのだ。いわゆる情念めいたものに引きずられないで、簡素で湿度の低いサウンドを敷き詰めた亀田誠治の仕事ぶりも冴えている。名作。*出嶌

2>THE BLUE HEARTS

THE BLUE HEARTS メルダック(1987)

もう15年ぐらい聴いてない気がするし、いまも聴き返さないで原稿を書いてるけど、鳴る。そんなアルバム。童謡みたいな譜割と語感でビート・パンクを鳴らしたという、日本語ロック史的に見てもエポックメイキングな一枚ってことになるんだろう。トータルの完成度という点の評価は以降の作品に譲らなきゃいけない気もするし、必ずしも本意の部分ばかりで作られた作品ではない、というのは後から知った話ではあるけど、遠くのほうから凄いフォームで全速力で走ってきて心の間近にまでズバッと迫ってくるような勢いは、このファースト・アルバムならではのものだろう。放っておいても聴き継がれていくような一枚。*出嶌

1>RCサクセション

COVERS ユニバーサル(1988)

  そういうタイミングでTVを観てたら、「桑田佳祐の音楽寅さん」で〈空耳アビーロード〉という企画をやっていて、桑田がビートルズ『Abbey Road』の収録曲を丸ごと替え歌にして延々と歌っていた。で、この『COVERS』を連想したわけだが、本来はこちらもそういうニヤニヤした思いつきの産物だったはずだ。全曲が洋楽の替え歌カヴァーで固められた本作は、5人組のRCが残した最後のアルバムである。反核の意志や原発への疑念を述べて物議を醸した“ラヴ・ミー・テンダー”と“サマータイム・ブルース”の歌詞、さらにはストレートなギター・サウンドへの回帰などが、徐々に足並みの揃わなくなっていたバンドを終幕へと後押ししたのも事実だろう。ただ、そんなこんなを遮断して聴けば、これほど呑気で好き勝手なアルバムもない。そもそもが反戦歌であるバリー・マクガイアの“明日なき世界”(高石友也のヴァージョンを下敷きにしている)を気持ち良さそうにカマし、レインボーズの“バラバラ”はダジャレ。単なる意義申し立てではなく、皮肉でクレヴァーな遊びがロックの姿で暴れているようなものだ。ゲストには山口冨士夫、三浦友和、坂本冬美、高井麻巳子、泉谷しげる、ジョニー・サンダース、そして桑竹居助という人も参加。岩谷時子の訳詞を改作した“サン・トワ・マミー”や、“黒くぬれ!”“風に吹かれて”のストレートな詞/歌も素晴らしく、原曲よりも先にこれを聴いてほしいとも思う。

 なお本作は、東芝EMI(当時)による発売中止騒動を受けて、RCがオリコン1位を記録した唯一のアルバムでもある。相変わらず騒ぎが好きだね~と清志郎は笑っているかもしれないね。*出嶌

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