こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

Eminem

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年05月28日 17:00

更新: 2009年05月29日 19:54

ソース: 『bounce』 310号(2009/5/25)

文/小林雅明


  やはりこうきたか! 『Relapse』というタイトルなら、当然こうくるべきでしょ!――エミネムの最新作のイントロのスキットだけを聴き終えた時点で、世界中の熱狂的なファンは、まずそう思ったのではないだろうか? 奴がまた姿を現してしまったのだ。しかもその登場の仕方は、97年末にウェブ・エンターテイメントから発表された『The Slim Shady EP』のイントロをすかさず思い出させる。〈奴〉とはエミネムが作り上げてしまった〈怪物〉、スリム・シェイディのことだ。そのEPの冒頭では、エミネムのオルター・エゴであるスリム・シェイディが〈よくも俺を殺してくれたな〉とばかりに甦ってくる。〈自分があってこそのエミネムなのだ〉と言われるまま鏡を見たエミネムは恐怖のあまりに悲鳴を上げ、鏡を叩き割ってしまうのだ(その様子はそのまま同作のジャケットに写し出されている)。すでにお気付きのように、97年の時点で消えていたはずの〈エミネムの悪の化身〉とも言われるスリム・シェイディが、ぶり返し(Relapse)ていたのだ……。

 『Relapse』のレコーディングに入った2008年までの5、6年は、ツアーの中断や緊急入院にも現われていたように、ドラッグの濫用によってエミネムはかなり深刻な状態に陥っていたという。新作ジャケの彼の肖像をよく見ると、巧みに並べられた無数のカラフルな錠剤であることがわかるが、ドラッグがここまで表立った形で作品の表面に出てきたのは、彼が所属するグループ、D12のメジャー・デビュー・シングル“Purple Pills”(2001年)以来のことだ。スリム・シェイディのドラッグ濫用は先のEPからも伝わってくるが、このオルター・エゴはそもそもD12の誕生と共に生まれたものだった。グループの結成を画策したのは、いまは亡き中心人物のプルーフ。彼は当時一大ブレイクしていたウータン・クランを追い越せとばかり、12人組のグループとしてD12(ダーティ・ダズン)の結成を画策、だが、人数が揃わず、結局は6人組で、各人の別人格も数に入れて、6×2=12としたのだった。プルーフと相談するなかで、当初は別のオルター・エゴを設定していたようだが、97年になって最終的に固まったものがスリム・シェイディだった。

インタビュー