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特集

Blue teardrops are falling(3)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年05月14日 11:00

更新: 2009年05月14日 17:40

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/出嶌 孝次

エゴの男

 その『What's Going On』は、「Rolling Stone」誌が2003年11月号にて選定した〈The 500 Greatest Albums Of All Time〉にて6位にランクインしている。みずからソングライティングを手掛け、ラヴソングではなく社会性のある歌詞が並んだこの作品は、いわゆるロック的な評価軸において〈名盤〉と〈認定〉された最初のソウル・アルバムだと言えるかもしれない。確かに『What's Going On』は比類なきクラシックである。ただ、そこに頂点を見てしまっては、マーヴィンの本質的な魅力から目を背けることになってしまうとも思うのだ。

 とにかく、『What's Going On』が世間に受け入れられ、渋々ながらもベリーを納得させたことによって、マーヴィンは気ままに創作活動を行えるようになっていた。彼ははそれを超える大作を生み出さんと、“You're The Man”や“The World Is Rated X”といった楽曲のレコーディングに入る。これらは『You're The Man』なるニュー・アルバムにまとめられる予定だった。

 が、彼にとっての〈クリエイティヴ面での自由〉というのは、周囲を思い通りの気まぐれに巻き込むものだった。やりたい。やっぱりやめる。気分次第。ゆえに、シングル“You're The Man”(72年)が不発に終わると、失望からアルバムの制作を途中で諦めてしまったのだ。その代わりに、スティーヴィーに貰ったシンセサイザーに夢中になり、要請のあったサントラ『Trouble Man』(72年)を完成させている。ちなみにその“You're The Man”はカーティス・メイフィールドばりにソリッドな緊迫感を備えたファンク・チューンで、もしアルバムが出ていたらどうだったのか……と妄想が膨らんでしまうのだ。

 いずれにせよ、マーヴィンは単純にモチヴェーションの高まることだけをやりたかったのだろうし、別にそれは悪いことではない。何を言いたいのかというと、マーヴィンの本質的で率直な魅力は、これ以降の作品にこそ素直に現れている、ということである。

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