凛として時雨(2)
時雨がシンプルに聴こえる瞬間が、いつもよりは多いのかな
――では今回のアルバムについてですが、“Telecastic fake show”と“moment A rhythm”が収録されていたのがちょっと意外でした。
ピエール中野(ドラムス、以下:ピエール) 意外ですかね。
――先行シングルが出ている状況でアルバムを作るのはみなさん初めてですし、“Telecastic fake show”にしても“moment A rhythm”にしても、その一枚で完結している世界があるわけじゃないですか。それをアルバムに入れ込む作業はいかがでした?
TK 新鮮でしたね。違う作品に入っていた曲が10曲のなかに入ると、また聴こえ方が変わるんですよね。逆にその2曲がスタート地点になってくれたから、その後の作業がいつもより見えやすかったっていうのがありましたね。
――時雨の〈静と動〉が端的に出ている2曲から広げていった?
TK そうですね。昔からあった曲をアレンジするっていう作業もありましたし、アコースティック・ギターの曲(“Tremolo+A”)――ツアーでずっとやっていた、もともと出来ている曲をパッケージするっていう作業もありましたし、ホントにゼロから作った曲っていうのもあったんですけど、まあ、いつもと変わらずという感じでしたね。最初はその2曲が入ってることが新鮮でしたけど、その後はいつもどおり作ったら、いつもどおり出来たっていう感じで。
――ちなみに、アルバム制作に入る段階で、コンセプト的なお話は……。
TK してないですね(笑)。
――いつもどおりに(笑)。
TK はい。いつもどおりに(笑)。
――(笑)。先ほど“Telecastic fake show”と“moment A rhythm”をスタート地点としてアルバム制作が始まったというお話を聞いて、なるほどなあと思ったんですけど、ある意味で両極とも言える2曲が起点となっているからなのか、本作は楽曲の振り幅がより大きくなったなと思います。あと、暴力的な轟音とエキセントリックな曲展開に翻弄される感覚がありながらも、音のひとつひとつがきっちりと聴こえるというか。そこが聴き手の耳を引き留めるポップさや、グルーヴの強化に繋がってる気がしますが。
TK 確かに、音色も含めて時雨がシンプルに聴こえる瞬間っていうのが、いつもよりは多いのかな、っていう感じはありますね。曲をとおしてすべてがポップっていうことではないと思うんですけど、そう聴こえる瞬間がいつもよりは多いというか。音色に関しても、『Inspiration is DEAD』はすごく荒々しい感じでしたけど、今回は、まあ荒々しい部分はあるけど、少し洗練された感じは……前に比べたらありますね。
ピエール 謙虚だね(笑)。
TK 僕は自分で録ってる曲が多いので、ほかのバンドに比べて音がいいなとかはまったく思わないんですけど(笑)、前の作品に比べると、よりグルーヴ感が出るような音色になってるのかなっていうのは感じますね。