凛として時雨 -第三回(2)
――先ほどTKさんが〈ファンキー〉っておっしゃってましたけど、ベースも跳ねてますし、しかもメインですし。ご自分で「珍しいな」とか思ったりしませんでした? 実際には途中で変わってるんですが、印象としては冒頭のベースのフレーズで貫かれている曲だと思うんですよね。
ピエール うんうん。
345 この曲はホントに必死だったのでベースのことはあんまり覚えてないんですけど、いつもとは違って張ってない声で歌ったので、そっちのほうが印象的ですね。囁く感じの歌は、今回のアルバムで初めてやったので。
――なるほど。その345さんの柔らかな歌声もそうなんですが、クライマックスに向けて徐々に幻想性が増していくような音響処理も印象的で……アコギやピアノの繊細な音とアグレッシヴな轟音とが溶け合っていく。この点は、苦労されました?
TK そうですね。最初に作ったデモを三人で再現することに全力を注いだんですけど、三人でパッとスタジオでやったときには、デモよりもカッコよくならなかったんですよ。それで、レコーディングをする時点では、ひとつひとつのパートから何から、全部そのデモを目指していたような感じもあったんですね。だけど音色にしてもベースのイントロのフレーズにしても、最初はまったく思い通りの音にならなくて。結局、僕がデモを作るときに家で弾いたベースとエフェクターを持っていって、まったく同じような状況を再現して弾いてもらったら、それが一番ハマったんですよね。それは昔345がメインで使ってたベースなんですけど、ベース一本でもホントに表情が変わるな、と思って。イントロのベースに関しては、僕は艶っぽくて歪んでる感じを出したくて、それを出すのに結構苦労したんですよね。何回もデモを聴き直して、デモを超えるまでは何回もトライしたいなと思って、アンプでやったりとか歪ませないでやったりとか、ホントにいろいろ試して……この曲はドラムの音とかもすごい好きなんですよ。ギターの音にはわりと無関心なんですけど(笑)。
――先ほどからお話を聞いていると、そういう感じですよね(笑)。
TK はい(笑)。だけど、ドラムもフレーズを追うような感じで録音していったので、二人からするとこの曲を作ったっていう意識はそんなにないと思います。素材を録って、その素材を組み合わせてひとつの曲を作ったっていう感じなので、たぶん、二人はどうなるかわからなかったと思いますね。で、やっとデモと同じようになって、パッと聴いたらみんなが「やっぱ、いいね」っていう反応だったんですけど、僕はそのときに「もうちょっとカッコよくなるな」っていう……確信ではなかったんですけど、直感がして。そこからまたスタジオに入ってどんどん(完成形を)探っていったら、結果的には誰も予想してなかった形になりました(笑)。
- 前の記事: 凛として時雨 -第三回
- 次の記事: 凛として時雨 -第三回(3)