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That's the way love is

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年05月07日 11:00

更新: 2009年05月07日 17:31

ソース: 『bounce』 308号(2009/3/25)

文/池谷 昌之

ラファエル・サディークが捧げるオマージュ


  トニ・トニ・トニ時代には〈ソウルの息子〉を名乗り、ソロでもレトロでヴィンテージなサウンドを標榜してきたラファエル・サディーク。昨秋にリリースされた彼の最新作であり、先日のグラミー賞でも3部門にノミネートされた『The Way I See It』がこのたびようやく日本盤化された。クラシカルなスーツに身を包んでソウル紳士を気取ったアートワークも含め、60年代ソウルが持つ空気感を徹底して再現したような内容は、過去の音楽に対する彼の憧れが極まった作品だと言えるだろう。

「そうだね、このアルバムはオレが大好きだったミュージシャンたちへのラヴレターみたいなものかな。俺が感じ取った彼らの音楽を俺流に表現してみました、っていう感じだね。例えば“Sure Hope You Mean It”はテンプテーションズの曲を思い浮かべて、そのエッセンスを盛り込んで作っているよ」。

“Just My Imagination”風のイントロで始まり、60年代のマーヴィン・ゲイを思わせるラファエルの熱いハイ・テナーが冴える同曲をはじめ、リバース・ブラス・バンドらを迎えてセカンドライン・ファンクとモータウン・ビートを融合させた“Big Easy”、スタックス調の“100 Yard Dash”、ジョス・ストーンと歌うテンプテーションズ“My Girl”似の“Just One Kiss”、デルフォニックスさながらのバラード“Oh Girl”などなど、アルバムにはさまざまなソウルのエッセンスが散りばめられている。なかでもハイライトとなるのは、女性への一途な思いを綴った“Never Give You Up”だ。ロマンティックでスウィートなこの曲には否応なしに蕩けさせられてしまう。

「俺自身がそういう人間だからね(笑)。純愛を信じてるタイプなんだ。彼女のことが好きでたまらなくて周りの人にも言わないと気が済まない……60年代ソウルのラヴソングって、みんなそうだったよね。そういうヴァイブを大切にしたいという気持ちはあるよ」。

 ここでも参考にされているのはモータウンだ。ダイアナ・ロス版“Ain't No Mountain High Enough”のようなストリングスが心を昂揚させ、間奏でのスティーヴィー・ワンダーのハーモニカも素晴らしいアクセントになっている。そしてラファエル肝煎りの新人シンガー、CJ・ヒルトンに70年代のマーヴィンを彷彿とさせる繊細でセクシュアルなムードを担わせた構成は、黄金のモータウン・サウンドを凝縮したかのようだ。

「確かに昔のモータウン・サウンドを活かした音楽になっているけど、それはモータウンの音楽が、長い月日が経っても色褪せない、素晴らしいものだからなんだよ」。

 そのように過去の音楽へのオマージュを公言するラファエル。これは、〈レトロ・ブーム〉と言われる昨今の流れも踏まえたものなのだろうか。

「いや、発想がそもそも違うんだ。たまたま音楽のヴァイブがそうなっただけで、あくまでも自分のなかにある〈楽しい音楽〉を作るというのが基本姿勢なんだよね」。

 そう、単にサウンドやスタイルを拝借するのではなく、〈自分のなかにあるもの〉が滲み出た結果がこの形になったというだけのこと。モータウンをはじめとする偉大な先達たちから受け継いだ血筋が、身体のなかから自然に溢れ出る……これこそ、ソウル・ミュージックへの愛に溢れた本物のトリビュートだろう。

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