MAKE THE ROAD BY INSTRUMENTS さまざまなインスト・バンドが台頭していく礎となったMG's
71年、黄金の4人による最終章となった『Melting Pot』。NY録音であることを表題で示唆してしまうぐらいだから、相当のワクワク感と意気込みをもって臨んだのだろう。それゆえ、主体的に舵取りした新機軸が理解されず、〈いつも通り〉という程度の評価しか得られなかったことは、特にブッカーとクロッパーを失望させたに違いない。そしてグループは解散。ダンとアルが率いるMG's名義の作品を経て、再結成を相談していた矢先にアルが逝去……こうして、その〈次〉は叶わぬ夢に終わるのだが、もし4人で活動を続けていたら、その先の光景はずいぶん違うものだったはずである。
『Melting Pot』で彼らが志向したのは、ファンキー・ソウルから脱皮したJBと同じく、粋なオルガン・バンドから濃ゆいファンク・バンドへの転身だったはずだ。MG'sと同じ“Hang 'Em High”を後に取り上げたミーターズも、MG's解散後にスタックスのハウス・バンドを務めていたバーケイズも、70年代に台頭してきたクール&ザ・ギャングも、みんな前時代的なヒップ感覚から一歩抜け出すことで新しいファンク感を手にするわけだが、本当ならMG'sがそれに先んじるはずだったのだ。サザン・ソウル的なイナタさにジャム感を加味した演奏は、一時はスタックス入りも果たすソウライヴのような現代のジャム・バンド(の支流)に見られる傾向だし、JBマナーを踏まえたタイトな演奏という部分はダップトーンなど現代のディープ・ファンク勢にも通じる。フュージョン寄りな作風のSPECIAL OTHERSなども含め、MG'sが拡張して踏み込む直前だった道は、いまや多くのバンドが行き来する街道になっているのだ。