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特集

TITTSWORTH

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2009年04月02日 12:00

更新: 2009年04月02日 13:26

ソース: 『bounce』 307号(2009/2/25)

文/青木正之 インタヴュー/出嶌孝次

フィジェットもベースも、みんな音の家族だよ


  シーンの細分化が加速度的に進む一方、自然発生的にそれを集約したり、狭間を行き交うような動きも徐々に形成されつつある。そんな流れにあって今後キーパーソンとなりそうなのが、ワシントンDCを拠点に活動している29歳、アメリカ人と中国人のハーフだというティッツワースだ。これまでアンオフィシャルな活動が多く、マニアの間で密かに愉しまれてきたブートレグ作品が、大物アーティスト(AC/DC、アンダーワールド、アース・ウインド&ファイアなど)たちの音源をネタにしているため、彼のリリースしてきた楽曲は〈爆弾仕事〉なんて呼ばれたりもしてきた。

 その活動ぶりと音楽的共通点の多さから彼はディプロと比較されたりもしているが、実際に本人も「彼がやってる〈Hollertronix〉のシリーズが、俺ら世代のクリエイターのドアを開いてくれたようなもんだしな。事実、俺が楽曲制作をスタートした最初のきっかけはディプロだった。彼が俺の2枚目のリミックス……確かミリ・ヴァニリだったと思うんだけど、それを聴いてくれて、ぜひリリースすべきだって、励ましてくれたんだ。いまでも彼のことをリスペクトしているし、その一挙手一投足を注目しているよ」と、みずから彼の信者であり、その存在が活力になっていることを明かす。

 そんなティッツワースが、キッド・シスター、ペイス・ロック、DJアサルト、フェデレーション、ニーナ・スカイ、ピットブルなど多彩な顔ぶれを迎え、ついに初のオリジナル・アルバム『Twelve Steps』をリリースした。本人もBモア=ボルティモア・ブレイクス・シーンの一員という意識はありつつ、ディプロからの影響の前段階として「DIY的なインディー・シーンや地元のゴーゴー、あとは90年代のヒップホップやドラムンベース、UKのハードコア・テクノやレイヴ・シーンとかね。DJ的にはA・トラックやクレイズ、クレヴァーの影響が大きいな」と語るように、そのバックグラウンドは目を見張るほど多様だ。

「ボルティモアのなかでがんばってきたけど、今回の制作にあたっては、その外にいるオーディエンスを初めて意識したんだ」。

 そんな言葉通り、ヒップホップ、ベース、ハウス、ロック、ファンク、R&B、ハードコア・ブレイクビーツなど、あらゆるエレメンツが複雑に絡み合って構成されている。しかし、そのなかにあって基盤になっているのが往年のエレクトロであり、マイアミ・ベースだ。

「そういう要素も当然あるよね。ベース・ミュージックでいうと特にクレイズからの影響は大きいね」。

 バウンシーなビート、ブーティーなベースライン、下世話なウワ音によるド派手な演出。ブートレグ時代の猥雑さにベース・ミュージックの魅力をたっぷり注入したティッツワースらしいオリジナル音源が盛りだくさんだ。と、ここでちょっと待った! この雰囲気、どこかで似たようなものが……そう! ハーヴやシンデンらスウィッチ一派が中心になって盛り上がっているアノ音楽と同じ匂いがするのだ。

「フィジェットのおかげで、俺らがやってるような音楽が以前よりもポピュラーになっているのは確かだね。それに、俺自身もレイヴァーだったし、彼らのスタイルには親近感があるよ。ベース、フィジェット、テクノ、ダブ・ステップ……呼び方はどうあれ、みんな音の家族のようなものだと思うよ」。

 さらに付け加えるならば、ディプロの下から登場したM.I.A.やボンジ・ド・ホレ、スパンク・ロック、サントゴールド、あるいはクルッカーズ、ダブファイア、パラ・ワンなどなど……あくまでも〈感覚〉としてだが、それぞれがかなり近い視点で活動をしているような気がするし、音の共通項を互いに見つけることもできる。

「サウンド的には必ずしもみんないっしょじゃないけど、それぞれにオーヴァーラップしてシンクロするような部分があるんだよね。当然シンパシーも感じているよ。ダブファイアことマット・ノードストロムは本当に近所に住んでるんだ。彼はディープ・ディッシュの仕事でグラミーにノミネートされる一方、ダブファイアとしてさらに進化を続けている。長い付き合いの友人で、音楽的にもかなり影響を受けてるね」。

 実際のところ、いま例に挙げたアーティストたちの楽曲は、いろいろなタイプのミックスCDやコンピ、またDJプレイで続けて耳にする機会も多いので、自然に作品同士/アーティスト同士が惹き付け合っているということなのだろう。その中心にいるのがティッツワースのようなアーティストなのだと、彼の発言やアルバム『Twelve Steps』を聴いていると思えてくる。

 これからさらに世界中を騒がすだろうティッツワースは、現在アジアとオーストラリア~ニュージーランドをツアー中。多忙を極めているようだが、のんびりするつもりは微塵もなさそうだ。

「3月には〈SXSW〉でのギグとUKツアーがあって、新しいEPももうすぐ出せると思う。イイ出来だよ。リリースが待ち遠しいな。他のアーティストも素晴らしい音源を続々と出してきているし、今後もカッティング・エッジなところを攻めていきながらジャンルの限界を更新していきたいね」。

▼『Twelve Steps』に参加したアーティストの作品を一部紹介。


キッド・シスターの2008年のシングル“Pro Nails”(Fool's Gold/Downtown)

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