N.A.S.A.(2)
未知の世界で求めるインスピレーション
『The Spirit Of Apollo』は、まさにこの発言をそのまま音に置き換えたような作品集だ。ここでN.A.S.A.は、大胆にもジャンルやジェネレーションを超えた約40名ものアーティスト――そこにはカニエ・ウェスト、デヴィッド・バーン、M.I.A.、ジョン・フルシアンテ、クール・キッズ、トム・ウェイツ、E-40、ヤー・ヤー・ヤーズ、スパンク・ロック、セウ・ジョルジ、ウータン・クラン、CSS、シズラ、ジョージ・クリントン、Q・バートらが含まれる――を同居をさせてしまっているのだが、それは単に奇を衒うことを目的にしたような安直なものでもなければ、自分たちの立ち位置を示すためにアーティストを弄ぶようなスノッブな視点を伴ったものでもない。
「アルバムは、想像し得るかぎりのぶっ飛んだコラボレーションをやろうってことだけで始まったけど、すぐにコンセプトはそこから大きくなっていった。まったく異なった世界のまったく予想だしない人々を一体化させるという発想でもって、俺たちは人々を分離する境界線をブチ壊していることに気がついた。そして、そのせいでアルバムには非常に統一性のあるテーマがあるってことがわかったんだ。自分が快適と感じたり馴れ親しんでいる箱のなかに閉じこもるのではなくて、未知の世界へと飛び出し、そこにインスピレーションを求める。俺たちが宇宙探査、とりわけアポロ計画と二重の意味で共感しているのは、まさにそこなんだ」。
もっとも、スクウィークのわりとオーセンティックなヒップホップ趣味とジゴンのブラジリアン・ルーツを軸に、現在ふたりが拠点にしているLAのアンダーグラウンド人脈やスパイク・ジョーンズのコネクション、そしていまDJを生業にしている者であれば誰もがあたりまえのように持ち合わせているはずのフィーリングを混ぜ合わせていけば、おのずとこういうラインナップのこういうアルバムになるのかもしれない。スクィークはそんな『The Spirit Of Apollo』を象徴する楽曲として、クール・キースとトム・ウェイツというやたらとイマジネーションを掻き立てられるコラボ、ディープ・サウスの密林に迷い込んだような奇怪で混沌としたムードの“Spacious Thoughts”を挙げてくれた。
「“Spacious Thoughts”はN.A.S.A.の自由な精神性が発揮された好例だね。最初俺たちはNYでクール・キースとレコーディングをして、そのあとカリフォルニア北部にある農場地帯の丸太小屋のスタジオでトムのパートを録ったんだ。ふたりとも素晴らしい人で、でも凄く奇妙でユニークだったよ。素晴らしい経験だったね。トムはこのプロジェクトにすごく熱心で、セッションが終わってからも時々アイデアを思い付いては電話をかけてくれた。彼がレコーディングした後、俺たちはニューオーリンズのナイトクラブの雰囲気を出してくれるルーズなホーンが必要だって考えてね。かつてエルヴィス・プレスリーがレコーディングをした古いスタジオで、古いマイクばかりを使ってホーンを録ったんだよ」。
▼『The Spirit Of Apollo』に参加したアーティストを一部紹介。
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