N.A.S.A.
N.A.S.A.が約6年もの時間を費やしてようやく作り上げた一大プロジェクト――といっても、これはアメリカ国立航空宇宙局の新計画ではなく、〈North America/South America〉を意味するウワサのDJコレクティヴ、N.A.S.A.のデビュー・アルバムについてのお話。基本的にこの両者はまったく関係がないのだが、なんの接点も見い出せないかというとそういうわけでもなく、N.A.S.A.の件のアルバムにはその名も『The Spirit Of Apollo』なんてタイトルがつけられていて、これは合衆国が国家の威信をかけて取り組んだあの〈アポロ計画〉の精神に則ったものだという。
「俺たちがアポロ計画にインスパイアされたのは、彼らが非常に勇敢だったから。宇宙に人間を送り出してから月に着陸させるまでを、およそ10年以内で実現してしまったんだ。それってとんでもない飛躍だよ。アポロ計画の関係者の話にもとても共感することができたね。ひとつの種として、つまり人類として、いかにしてこの惑星から飛翔するかということ。それは俺たちのアルバムにも繋がる非常に統一性のあるメッセージを持っていると思うんだ」。
そう語るのは、スパイク・ジョーンズの実弟であり、これまでにヤー・ヤー・ヤーズやクリスタル・キャッスルズ、ファット・リップらの作品に携わってきたブルックリン出身のサム・スピーゲルことスクィーク・E・クリーン(以下、発言はすべてスクィークによるもの)。N.A.S.A.は彼とブラジル出身のDJ兼プロスケーター、ゼー・ゴンザレスことDJジゴンからなるユニットで、いわく「パーティー・ロッキングでエクレクティックで、誰もが予想できないことをするプロジェクト」。スクィークはお気に入りのアルバムとして、ウータン・クラン『Enter The Wu Tang(36 Chambers)』、ファーサイド『Bizarre Ride II』、ハービー・ハンコック『Head Hunters』、ビートルズ〈Anthology〉、トライブ・コールド・クエスト『Midnight Marauders』など、いわゆるゴールデン・エラのヒップホップ・クラシックを多く挙げているが、ジェイムズ・ブラウンからジョルジオ・モロダーまで、さまざまな音楽に影響を受けたことを告白している。
「俺たちはただ単に北アメリカと南アメリカという2つの大陸を跨いで集まったってだけじゃなくて、もっとグローバルなコラボレーションをめざしてるんだ。このプロジェクトは〈未知の物事に対して偏見なくオープンマインドでいよう〉っていうアイデアの表明なんだよ。N.A.S.A.は人類がひとつの人種として存在するユニティーなんだ。宗教や人種、哲学、ジャンル、政治などによって分離されるものではなくてね。いろんなことにオープンになって、いままで想像もしなかったようなコラボレーションやインスピレーションを探し出す。それが俺たちにとってのN.A.S.A.なんだ」。
▼『The Spirit Of Apollo』に参加したアーティストを一部紹介。
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