ROCK ON SPITFIRE プロディジーとロックの関係
プロディジーがロック・リスナーに愛される(がゆえに、クラブ・ミュージックのリスナーから軽んじられることも多い)のは、楽曲の備えたダイナミズムを増幅するライヴ・パフォーマンスが、ロック・アクトのそれと地続きだからだろう。象徴的なのは97年の〈グラストンベリー〉でダンス・アクト初のヘッドライナーを務めたことか。日本でも〈フジロック〉に97年の初回から何度か参戦(初回は天候不順でライヴできず……というのも〈ロック〉な逸話だ)し、昨年は〈サマソニ〉にも登場するなど、彼らとビッグなロック・フェスは非常に相性が良いのだ。
そもそも彼らのブレイク自体が同時期のブリット・ポップ勢とのシンクロによるものだとされている。実際にその時代の狂騒を回顧した映画「リヴ・フォーエヴァー」のサントラにも彼らの“Breathe”が収録されているが、果たしてそうだろうか。例えば“Voodoo People”でニルヴァーナの“Very Ape”を、“Firestarter”でブリーダーズの“SOS”をそれぞれネタ使いしているように、当人たちの目線はオルタナ以降のUSロックにあったことがよくわかるし、L7“Fuel My Fire”のカヴァーも含む『The Fat Of The Land』でドラマーにマット・キャメロン(サウンドガーデン)を迎えたあたりからもその志向は明白だろう。ジム・デイヴィス(ピッチシフター)からレヴ(元タワーズ・オブ・ロンドン)まで歴代の録音/ライヴ・メンバーを見ても傾向は如実で、むしろUKロックの典型からかけ離れた趣味だったからこそブレイクできたんじゃないか。そういう意味ではジミー・イート・ワールドからリフューズドまで、ハードコア~エモ系のバンドが好んでストレートなプロディジー・カヴァーを披露しているのにも納得できるのである。
2004年のサントラ『Live Forever』(Columbia)
L7の94年作『Hungry For Stink』(Reprise)