BIGGER BEAT GOES ON 甦るビッグ・ビート世代の勢い
ロックなどの派手なサンプリングを機軸にしたブレイクビーツで、90年代半ばから一世を風靡したUK生まれの音楽がビッグ・ビート(日本ではデジタル・ロックとも)だ。ちょうど〈ブリット・ポップ〉が下火になって旧来のロックの勢いが衰えた時期とも重なり、アシッドなビキビキのシンセやヘヴィーなベースラインが持つダイナミズムにはロック・ファンも抗えなかったのだろう。その代表格とされたのがケミカル・ブラザーズ、プロディジー、ファットボーイ・スリム(ノーマン・クック)という、実はいずれもその前から活動していた大物たちだ。そのファットボーイを抱えるスキント、プロペラヘッズを擁するウォール・オブ・サウンドという2大レーベルに加え、クリスタル・メソッドやジャンキーXL、グルーヴ・アルマダ、アポロ440らが次々と作品を出して勢いはたちまち世界に飛び火していった。
そして、ブームから10年を経た昨今、ロック・サイドからのクラブ・ミュージックへの歩み寄りを背景に、ふたたび当時と似たような状況が生まれつつある。そんな最中にケミカルがスパンク・ロックと組み、ノーマン・クックは新たにBPAを始動、ジャンキーXLら往年の大物たちが息を吹き返し、そこにプロディジーも復活……と何だか盛り上がっている。経験豊富なおじさんたちがもうひと暴れする時が来たようだ。