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The Prodigy(4)

プロディジー・サウンドが帰ってきた!!

 そして、彼らはライヴで新曲を試しながらレコーディングを続け、〈再生〉と〈進化〉を両翼に背負ったアルバムを完成させた。それが今回の『Invaders Must Die』だ。ゲストの多かった前作とは異なり、フー・ファイターズのデイヴ・グロールが“Run With The Wolves”“Stand Up”でドラムを叩き、ダズ・イット・オフェンド・ユー・ヤー!のジェイムズ・ラッシェントが表題曲と“Omen”の共同プロデュースを手掛けていることを除けば、基本的にはコア・メンバーでプロディジー・サウンドの魅力を限界まで引き出した内容になっている。

「アルバムはダークな作品ではない。『Music For The Jilted Generation』と同じくらいハードでブルータルだけど、意気揚々としていてアップな感じの作品だ」(リアム)。

 リアムの言葉通り、『Invaders Must Die』にアップなムードが漂っているのはレイヴ・サウンド特有の祝祭感によるものだろう。冒頭で〈本作が初めてバンドが歩んできたキャリアのすべてを統合した作品である〉と述べた理由も、これでおわかりいただけると思う。そう、ここにはパンクがあり、ヒップホップがあり、そしてレイヴがある。彼らが影響を受けてきた〈反抗の音楽〉のすべてが凝縮され、爆発しているのだ。そして、これまでのキャリアの集結したサウンドを進化のベクトルへ向かわせたのが、グライムやダブ・ステップ、ニュー・エレクトロなどの最新のビート・ミュージックだ。リアムのビートが尖りすぎているため、結果的にグライムにもダブ・ステップにもエレクトロにもなっていないところは強烈なオリジナリティーの証だが、いずれにせよアルバムにフレッシュな躍動感を与えているのは、まぎれもなくビート・ジャンキーであるリアムの嗅覚が嗅ぎ取ったモダン・ベース・ミュージックの黒く研ぎ澄まされたグルーヴなのだ。

「世界ヘヴィー級チャンピオンの上腕筋が衰えてることほど悲しいことはないだろ? この音楽が俺たちにとっての上腕筋で、いまはすべてが完璧な状態にある。この世で最高のウォール・オブ・サウンドでステージを引き裂く。いま俺たちこそが世界最高のバンドだと言えるんだ」(キース)。

 自信に満ちた発言と、そこから1mmのブレもない圧倒的なサウンド。その破壊力は先日の東京・SHIBUYA-AXにおける暴動寸前の盛り上がりでも証明されていた。バンドへの確信から導き出された革新的な新作『Invaders Must Die』──第2の全盛期の幕開けを告げる強烈な祝砲の威力を、ぜひあなた自身の耳と身体で感じ取っていただきたい。

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年03月26日 11:00

更新: 2009年03月26日 18:13

ソース: 『bounce』 307号(2009/2/25)

文/佐藤 譲

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