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JUST TRY TO SEE IN THE DARK なぜ70年代末にダークなロック・サウンドがUKでもてはやされたのか?

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年02月26日 11:00

更新: 2009年02月26日 16:27

ソース: 『bounce』 304号(2008/10/25)

文/妹沢 奈美

 キュアーがアルバム・デビューを飾った79年は、77年にロンドンで大波を起こしたパンクの勃発に端を発するシーンの変化が、さらに次の段階へと動きはじめた時期にあたる。現在では単純に〈ポスト・パンク〉と呼ばれることが多いが、この時期のサウンドを覆っていたのは、激情にプラスして蝋燭の明かりにも似た仄暗いムード。時に退廃的ですらあり、時に耽美な香りを漂わせているのが特徴だ。

 その筆頭に挙がるのが、〈ゴシック・ロックの祖〉と言われるジョイ・ディヴィジョンとスージー&ザ・バンシーズ。前者のフロントマン=イアン・カーティスの地を這うような歌声は、まるで黄泉の世界からの呼び声のようだし、後者が名前に用いた〈バンシー〉とは、そもそもケルトに伝わる〈家族の死を予言する女の霊〉のこと。おどろおどろしい。また、黒づくめの衣装とメークを施したバウハウスは、パンクだけでなくそれ以前のグラム・ロックのスタイルも継承。そして、インダストリアルへと移行していく前のデペッシュ・モードもこの頃にデビュー。機材としての開発が進んでいたキーボードを多用し、ダーク・エレクトロの源流となっていった。他にも、よりニュー・ロマンティックな傾向の強いアダム&ジ・アンツやジャパン、アート・ロック的なスクリッティ・ポリッティなどさまざまな顔ぶれが登場する。この後、第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン期──つまりよりアッパーなニューウェイヴ時代──へと突入していく一方で、マンチェスターの文系バンド、スミスがその暗さを受け継いでいくことに……。

 70年代末から80年代にかけて、どうしてこれほどダークさを帯びたサウンドがUKで一世を風靡したのか。ちなみに79年は、蔓延する〈英国病〉の打破をめざしてマーガレット・サッチャーが政権に就いている。つまり長らく続く保守党政治への国民たちの諦めの感情を、ユース・カルチャーはどこよりも早く象徴していたとも言えそうだ。
▼関連盤を紹介。


アダム&ジ・アンツの80年作『Kings Of The Wild Frontier』(Epic)

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