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The Cure(3)

新たな黄金期に向けて……

 そんな状況にあったロバートを大いにインスパイアしたと思われるのが、90年代末から続々とデビューした、キュアーを熱愛し、多大な影響を受けた米国の若手アーティストたちだ。ニューメタル系からインディー・バンド群に至るまでロック・シーン全体を巻き込んだ再評価の波に押されるようにして、2003年冬には12枚目のアルバム制作に着手。やはり彼らの大ファンで、ニューメタルの育ての親でもあるロス・ロビンソンが共同プロデューサーを買って出た。ロスの勧めでライヴ録音され、ラウド&ヘヴィーに仕上がった2004年の『The Cure』は、ゲフィンへの移籍第1弾となったが、この年は米国でふたつのトリビュート・イヴェントも開催されている。ひとつはバンドみずから監修したフェス〈Curiosa〉で、インターポールやミューズ、ラプチャーらメンバーのフェイヴァリット・バンド、あるいはキュアーを慕うバンドを集結させて北米各地をツアー。もうひとつはMTV主催の〈MTV Icon〉だ。AFIにデフトーンズ、UKの若手を代表してレイザーライトなどが出演し、キュアーの曲をプレイ。さらに司会はなんとマリリン・マンソンが務めたのである。

 すっかり解散説を吹き飛ばしたロバートは、B面曲と未発表曲を4枚組ボックス・セット『Join The Dots』にまとめ、最初の7作品をボーナス・トラックやDVD付きでリイシューするレトロスペクティヴな作業を進めつつ、ファンの熱望に応じてツアーも続行。2007年には23年ぶりの来日公演が〈フジロック〉で実現し、普段の苗場にはない異様な空気で初日の〈GREEN STAGE〉を包んだ。当時リリース間近とされていた最新作『4:13 Dream』は、それからさらに1年を経てようやく完成。13枚目であることから〈13〉という数字にこだわり、曲数も13、今年の5月から毎月13日に1枚ずつシングルをカットし、9月にはこれらシングル曲のリミックスEP『Hypnagogic States EP』も送り出した。フォール・アウト・ボーイのピート・ウェンツ&パトリック・スタンプ、マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイらをリミキサーに起用し、フォロワーを総動員した形だ。このような大掛かりな演出で煽っただけある傑作を、間もなくリリースしようとしている2008年版のキュアー。来年はアルバム・デビュー30周年を記念してドキュメンタリー作品の企画もあるというが、80年代後半の黄金期に在籍したポール・トンプソンとサイモン・ギャラップが久しぶりに揃ったいま、新たな黄金期を予感せずにはいられない。

▼キュアーの作品を紹介。

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2009年02月26日 11:00

更新: 2009年02月26日 16:27

ソース: 『bounce』 304号(2008/10/25)

文/新谷 洋子

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