GIRLY / ORGANIC - PAVIRION OF ELECTRONICA Part.4
さまざまなジャンルに溶け込み、サウンドに空間的広がりを与える電子音楽――エレクトロニカ。当博覧会では、ここ2~3年に発表された作品を中心にテーマごとのパビリオンを設置しております。ごゆるりとご鑑賞いただければ、これ幸い。但し、変幻自在の音であるがゆえに、いつのまにか入り口に掲げられていたテーマとは別のパビリオンに迷い込んでいる……といった不思議体験も想定されますので、ご了承ください!? 第四弾は、ガーリー/オーガニック編です。
■GIRLY
Gutevolk 『グーテフォルクと流星群』 noble(2007)
竹村延和のChildisc、細野晴臣のdaisyworldからのリリース経験もある西山豊乃のソロ・プロジェクト。kazumasa hashimotoを共同プロデューサーに迎えた本作は、ジャズやソフト・ロック、エレクトロニカを軽やかに横断したポップ・ミュージック集。ノスタルジックな彼女の歌声と煌めく電子音、温もりあるバンド・サウンドが描き出す無邪気な音世界は、時空を超えた記憶の旅へと聴き手を連れ出してくれる。*土田
Piana 『Eternal Castle』 noble(2007)
国内外で活動するエレクトロニカ・シーンの歌姫による3作目。生楽器の比率を高めた本作でも、天上から降り注ぐようにピュアな歌声は健在だ。ピアノやアコースティック・ギター、ストリングスなどが奏でる流麗な旋律や可憐な電子音と寄り添うように、慈愛深い歌を披露している。極限まで研ぎ澄まされたポップ・ソングたちは、まるで聖歌のごとき清らかさ。*土田
miroque 『green anthology』 TWINKLE/HEADZ(2008)
映画「ストロベリーショートケイクス」や細野晴臣のトリビュート・アルバムなどでもフェミニンなアンビエント世界を提示した実力派クリエイターの3作目。空気中に溶け出した電子音たちがふわりと重なり合うなかで、トンコリやカリンバ、二胡などの生楽器が優しい語り部となってストーリーを紡ぐ。“mizuumi no soba”“swan no uta”など、ラヴリーな楽曲タイトルをそのまま音像化したような、ファンタジックでドリーミーなエレクトロニカ作品だ。*土田
lilyqMay 『Turquoise』 WIO WIO SOUNDS(2008)
前作同様、元PoodlesのKUJUNがプロデュースを担当した2作目。デトロイト・テクノ~ブレイクコア的なビート感と澄み切った電子音がアンビエントに舞う本作は、〈パワーストーンの力を心に感じるような楽曲〉がテーマ。そのお題のごとく、静かな昂揚感で聴き手の心を浄化してくれる、スピリチュアルなダンス・ミュージック集に仕上がっている。*土田
■ORGNIC
Akira Kosemura 『Tiny Musicals』 schole(2008)
テニスコーツやツジコノリコなども所属するオーストラリアの音響系レーベル、ルーム40傘下のサムワン・グッドからデビューを果たし、現在は気鋭のエレクトロニカ・アーティストが名を連ねるscholeを主宰するクリエイターの2作目。ピアノと電子音がワルツを踊っているような冒頭曲に始まり、日常をシンプルに、リリカルにトレースしたサウンドがじんわりと胸に沁みる。先週ファースト・アルバムを発表したばかりのpaniyoloもギターで3曲参加。*土田
kazumasa hashimoto 『Euphoriam』 noble(2007)
室内楽と電子音楽を知的に融和させたサウンドで絶大な人気を誇るエレクトロニカ・シーンの俊英。ピアノやギターのみならずベースやドラムまで、ストリングス以外の楽器のほとんどを自身で演奏したという本作は、落ち着いたトーンの女性ヴォーカルをほぼ全編に配したエレガントなポップ・ソング集(Gutevolkこと西山豊乃も参加)。生楽器の響きとほんの少しの電子音によるオーガニックなハーモニーが美し過ぎてマジカル! *土田
高木正勝 『AIR'S NOTE』 DefSTAR(2006)
映像作家としても国際的に活躍する俊英が、地元・京都の自然にインスパイアを受けて制作したというミニ・アルバム。リリカルなピアノが郷愁を誘う“Crystallized”や、UKフォークのような深遠さを湛えた女性ヴォーカル曲“Watch the World”など、生楽器と電子音のアンサンブルが生む楽曲群は、シンプルでありながら実にメロディアス。特に、アクアラングのマット・ヘイルズが歌う“One by one by one”は神々しいほどの美メロぶり! *北野
miyauchi yuri 『FARCUS』 RALLYE(2007)
デビュー作『Parcage』が国内外で絶賛を浴び、〈ラップトップ世代のアントニオ・カルロス・ジョビン〉と評された新鋭の2作目。オーガニック・エレクトロニカというお題で真っ先に思い浮かべる方も多い作品では? アコギやピアノといった生楽器の旋律と柔和な電子音、穏やかなブレイクビーツとの有機的な交歓は、若葉のように瑞々しい生命力に満ちたサウンドを生み出している。*土田
VARIOUS ARTISTS 『Over Flow pH:2.0』 涼音堂茶舗(2009)
エレクトロニカ豊穣の地である京都に拠点のひとつを置く電子音楽レーベル=涼音堂茶舗が贈る、〈温泉チルアウト〉をテーマにしたコンピの第二弾。温泉と音楽を融合した世界初(?)のフェス〈鳴響〉でのライヴ音源が中心で、サワサキヨシヒロ!と地元のおじいちゃんによる民謡トロニカ・セッションや、こけしを削る音にアブストラクトなビートを重ねた実験曲など、テクノロジーと伝統芸能が自然に隣り合わせとなった感じが素敵な一枚です。*北野