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WORDROBE 08>>09

2008年に頻出したキーワードを解説! 音楽シーンの2009年がわかるかも!?

フューチャーポップ
〈テクノ・ポップ・ユニット〉を謳って登場し、ブレイクを果たしたPerfumeをきっかけに、中田ヤスタカ絡みのMEGやcapsuleら、あるいはD-topia絡みのAira Mitsukiや80_pan、他にも元気ロケッツやSWEET VACATIONのようにハウシーなものやエレポップ、8ビットものまでが束で認知される風潮が生まれた。が、Perfumeの音がいわゆる〈テクノ・ポップ〉じゃないようにサウンドはどれも相当バラバラだし、共通要素も女性ヴォーカル主体のエレクトロニックな作品ということぐらいだ。新年もその動きは続くだろうが、呼ばれ方はさておきこの界隈でユニークな試みが繰り広げられていくのは間違いないだろう。なお、Aira Mitsukiのアンサーは言わずもがな、MEGもハドーケン!と組んで次を見据えている。
(出嶌)

ヴィンテージ・ソウル
 ヴィンテージ・ソウル、またはモータウン・スローバックとも呼ばれる、60'sソウルのフィーリングをいまに甦らせたサウンド・プロダクション。エイミー・ワインハウスのブレイク以降顕著になってきたこのスタイルは、2008年に入ってからソランジュやラファエル・サディーク、ステファニー・マッケイ、リトル・ジャッキー、ジョヴァンカらが大胆に導入したことで完全に定着した感もある。ジャズミン・サリヴァン“Switch”やラヒーム・デヴォーン“Friday”のようにアルバム中のアクセントとしても使い勝手が良く、しばらくは重宝されることになりそうだ。
(高橋)

ボサノヴァ50周年
 2008年はボサノヴァの誕生から50周年という記念イヤーだった。その経緯などはDVD化されたドキュメンタリー映画「ディス・イズ・ボサノヴァ」を観ていただくとして……そんな機会にリイシューやコンピなどの関連タイトルも数多く登場した。注目の復刻はエリゼッチ・カルドーソの58年作『Cancao Do Amor Demais』で、これは第1作目(0作目とも)のボサノヴァ作品とされることが多いものだ。また、naomi & goroの名曲カヴァー集など、より親しみやすい好企画もあった。なお、最初のボサノヴァ曲とされる“Chega De Saudade”の誕生に寄与したフランスの伊達男、アンリ・サルヴァドールは奇縁にもこの年に天に召された。
(出嶌)

ポスト・ニューレイヴ
 2007年に世界中で暴れまくったニューレイヴの波は、2008年も引き続きシーンを席巻。音楽関係者はこれらムーヴメントを〈ニュー・ノイズ〉〈ニュー・エキセントリック〉などと命名するも、彼らの個性とシーンの勢力は一定の言葉で括ることなどもはや不可能なほど拡大化していくことに。また、ファットボーイ・スリムの主宰レーベルからウィップがデビューし、キツネからも初のロック・バンドとしてカザルスが華々しく登場、さらにジャスティスがフェイヴァリットに挙げたことがきっかけでミッドナイト・ジャガーノーツがブレイクの糸口を掴むなど、ロック・バンドとクラブ・アクトの交流はますます盛んになっていった。
(白神)

ヴァイブ・ミュージック
 振り返れば、きっかけはジャスティン・ティンバーレイクとティンバランドのスリリングな合体ということになるだろうか。その後はユーロ・ハウスを選択したリアーナのヒットやダフト・パンクをネタ使いしたカニエ・ウェストの影響もあり、多くのアーバン作品がエレクトロ~ハウス~テクノのテイストを貪欲に吸収して、これが一部ではヴァイブ・ミュージックと総称されるトレンドとなった。エポックはスヌープやジャネット、アッシャー、ニーヨらの楽曲で、他にもクリス・ブラウンがハウスの“Forever”をヒットさせている。この動きはジャスティンやニーヨを追う面々にそのまま転用され、M・ポコラやコルビー・オドニスはその代表例だろう。ただ、その音自体がアーバン作品のいちフォーマットとして完全に認知されたため、呼称自体はさほど使用されなくなっている。
(出嶌)

ポスト関西ゼロ世代
 あふりらんぽやZUINOSINをはじめ、2000年頃に大阪のアンダーグラウンド界を賑わせた新世代バンドたちの総称である〈関西ゼロ世代〉。彼らの初期衝動をより原始的に撒き散らした多種多様な音楽を原体験とし、2005年頃以降に登場した超個性派たちが、今年は一気に良盤を発表した。別掲のミドリ(こちら)やneco眠る(こちら)を筆頭に、ミニマル・ゴシック・メタルで暗黒ファンタジーを描く夢中夢、お囃子ガレージ・パンクなワッツーシゾンビなどは要注目。ジャンル的な統一感はもちろんゼロだが、カオスを巧みにエンターテインする手腕は〈ゼロ世代〉による強烈な洗礼の跡が丸見えだ。
(土田)

フィジェット・ハウス
 ブレイクビーツ~エレクトロ~ハウス~テクノの過剰なゴッタ煮サウンドで、さまざまなものをそこに繋げて解釈できるフィジェット・ハウス。始まりはスウィッチの“A Bit Patchy”(2005年)だったのだろうが、その呼称が定着した2008年こそがフィジェット元年だったのかも。ハイライトだったマシーンズ・ドント・ケア以外にも、元祖ダブサイデッドの復活、A・トラックやクロッカーズら新世代の台頭、MADEMOISELLE YULIAや大沢伸一ら日本勢の反応などなど、話題は尽きず。年末の強力ミックスで存在感を炸裂させたシンデンや、キッド・シスターを送り出すA・トラックあたりが2009年は急速にメジャー化の予感あり。
(石田)

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2008年12月25日 10:00

更新: 2008年12月25日 17:50

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/bounce編集部

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