ディスコスコグラフィック [ 電気クンビアが来たぞ! ]
2008年の重要キーワードとして忘れちゃいけないのが、ブッ飛んだ盛り上がりを見せたダンス・ミュージック〈デジタル・クンビア〉だろう。まずクンビアそのものについて説明しておくと、このコロンビアの伝統的なダンス音楽は、そもそもスペインの植民地だった同地に奴隷として連れてこられた黒人が生み出したもの(ギニアの伝統音楽、クンベに由来するとされる)。誕生は18世紀と古いが、それがやがて大陸中に広まり、USやメキシコなど北中米にまで伝播されて、南米を代表する人気リズム音楽となったものである。そのクンビアを特徴づけるのが、南米音楽では珍しい裏打ちの2ビートによるのんびりしたトコトコ軽快なリズム。そのスカにも通じるリズムは現代のラテン・ポップにも繋がる大衆音楽として機能していて、例えばオゾマトリやエル・グラン・シレンシオ、メスクラらの音楽性にもクンビアの要素は当然のようにある。ロック・ファンには晩年のジョー・ストラマーが虜になったサウンドとしてお馴染みだろうし、近年ではクァンティックやアップ・バッスル&アウト、われらがクレイジーケンバンド、DJ界隈ではクボタタケシらが反応してきた。
そんなクンビアも今世紀を迎えるあたりからダブやテクノを混合してデジタル化しはじめるのだが、その波を上手くピックしたのが、セニョール・ココナッツの選曲したエッセイの名コンピ『Coconut FM』だ。バイリ・ファンキにも脚光を浴びせた同作ではディック・エル・デマシアードが紹介され、前後してブレイクしたM.I.A.やディプロにも通じるサウンドは敏感な辺境系DJたちにも多大なショックを与えている。ここ数年は、いまいちばんキテるアルゼンチンのレーベル=ZZKなどシーンを牽引する顔ぶれの音源も徐々に入手しやすくなってきたし、そのユルくて危ないゲットー・ダンスホール・サウンドは2009年もますます多くのリスナーを魅了していくに違いない!
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