J-POP STANDARD
エレクトロニックなポップスの隆盛
変わらずオーセンティックなシンガー・ソングライター作も豊作だった一方で、エレクトロニックなものへの興味も高まっている昨今。それを促したのは、Perfumeや鈴木亜美など中田ヤスタカ製のエレクトロ~ハウス路線の楽曲が一般的に認知されたことだろう。そこに端を発し、ハウス風味のダンサブル&メロディアスな女子ヴォーカルものなども多く登場した。またpupaやいとうせいこう&ポメラニアンズ≡といった新たなユニットの意欲作が話題になったりも。
(加藤)
YMCK 『ファミリージェネシス』 avex trax
静かにその数を増やすチップ・チューン・アーティストの先駆けがメジャー・デビュー。シネジャズのようなオシャレ感覚とクールなアレンジ、ノスタルジーを喚起させるメロディーを8ビット化するセンスは随一だ。他にもカヴァー集やDE DE MOUSEとのスプリット盤も注目された。
(久保田)
羊毛とおはな 『こんにちは。』 Living Records Tokyo
コリーヌ・ベイリー・レイ作、冨田恵一プロデュースの“falling”で始まる初の全曲オリジナル作。〈アコースティック・ギターと声〉というシンプルなスタイルからバンド・サウンドに衣替えしても芯の強いメロウ・マインドを発揮し、注目度も飛躍的に上昇した。
(久保田)
鈴木慶一 『ヘイト船長とラヴ航海士』 ソニー
17年ぶりとなる彼のソロ作は曽我部恵一の全面プロデュース。もちろん曲中でもがっつり参加して、アコギやピアノの弾き語りからエレポップまで、慶一さんと恵一さんが仲良く音の海原を旅している。下の世代のサポートを受け、より輝きを増したヴェテランの好例。
(加藤)
青山テルマ 『DIARY』 ユニバーサル
こんな衝撃的な出会い、10年前にもあったなあ……ってのはさておき、とにかく“そばにいるね”の印象を1年通して強く焼き付けられたが、初のアルバムに詰め込まれた濃厚な〈ポップ〉も負けず劣らず上質で、強い。言わずもがな〈2008年の顔〉だけど、その奇跡はこれからも続きそう。
(久保田)
加藤ミリヤ 『TOKYO STAR』 ソニー
若旦那(湘南乃風)を招いた本作の先行シングル“LALALA”が初のTOP10ヒットになるなど、デビュー4年目にして絶賛加速中。安室奈美恵の名曲リメイク“19 Memories”や、ネタ物だけで構成したベスト盤『BEST DESTINY』など、ひとヒネリあるリリースも話題に。
(久保田)
Thousands Birdies' Legs 『Thousands Birdies' Legs Ⅱ』 ミディクリエイティブ
スリリングでクールなジャズ・フレイヴァーと情感豊かな詞世界で、心地良く身体を揺すってくれる彼らのセカンド・アルバムは、昨今話題のシティー・ポップにもリンクして。ヴォーカル=寺尾紗穂のソロ作『風はびゅうびゅう』も傑作で。
(久保田)
いとうせいこう&POMERANIANS≡ 『カザアナ』 アミューズ
ひとつ流行ればそればっかのシーンに……って意味をタイトルに込めたかはさておき、邦ヒップホップの草分けと下北裏打ちバンドの共演を日本のダブ・シーンの重鎮がまとめ上げ、夏フェスを中心に盛り上げた企画モノ……でもなさそうなのは聴けば明白。
(久保田)
笹倉慎介 『Rocking Chair Girl』 GROUND
米軍ハウスに住んでみたい!なんていう声をよく聞きますが、実際にハウスに住み、〈日本にあって日本にあらず〉な静かな環境とゆったりとした間取りから生み出された奇跡のうた。〈和製ニール・ヤング〉なんてカンタンにあしらえないぐらい情緒深いファースト・アルバム。
(久保田)
詩音 『Candy Girl』 HOOD SOUND/Village Again
オッサンには手出しできない(?)ハデな佇まいに偏見を抱く人もいそうだけど、配信人気も背景にした同世代の支持はもちろん、それ以外の層にも届く普遍的な歌心を備えていたことはもっと知られるべき。1年通じてのHOOD SOUNDの好調ぶりを象徴する作品でもありました。
(出嶌)
MiChi 『MiChi MadNesS』 MMM
ややエキセントリックな“Fuck You And Your Money”で注目を集め、すでにメジャー入りしている彼女のファースト・アルバム。M.I.A.ノリなトラックもベタなカヴァーも等価で表現できる屈託のなさが魅力的で、こういう存在が急激にエレクトロ化するJ-Popの今後を規定するかも!?
(出嶌)
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