SOPHISTICATED POP
レトロな音をフレッシュに解釈
レトロの今様解釈──この分野の筆頭に挙げられるキーワードはこれだろう。エイミー・ワインハウスに続けとばかりにアデルやダフィが程良くソウルで程良くジャジーなアプローチによってグラミーにも選出、ジェイミー・リデルやサム・スパローは80年代のプリンス感覚に繋がり、バード&ザ・ビーは過去と未来を結び付け……と、古き良きものに〈感覚的に〉繋がりながら、それをどう洗練させて自分流のいまのポップスに仕立てるかが問われた2008年だった。
(内本)
ADELE 『19』 XL
痩せ細ったエイミーより柳原可奈子体型のリアルさと元カレへの言い分で女子の共感を得た19歳。ただし、エタ・ジェイムズとジル・スコットを手本にして歌を始めたという彼女のスモーキー・ヴォイスには、とても19歳とは思えない深みが。今度のグラミーでエイミーに続くUKソウル娘の快挙となるか。
(内本)
SIA 『Some People Have Real Problems』 Hear Music
ゼロ7作品で歌ってた彼女のソロ作は、哀愁や郷愁を未来的な音に漂わせながら表現していたあたりが2008年的。ベックやバード&ザ・ビー(2人揃って参加!)やプリシラ・アーンと仲良しなことからも窺えるように、柔らかな歌声なれど実験心の旺盛な人です。
(内本)
TRISTAN PRETTYMAN 『Hello』 Virgin
コルビー・キャレイら後追いの勢いなど気にせず、〈女性版ジャック・ジョンソン〉の括りからいち早く脱した彼女は、オーガニック&シンプルな部分を残しながら、ブルースやロックにも接近して新境地を切り拓いた。頭打ちなサーフ系ポップの一歩先を行かんとする姿勢が男前。
(内本)
MELODY GARDOT 『Worrisome Heart』 Universal
〈ノラ・ジョーンズ以降〉の括りに入る女性ポップ歌手は2008年も何人か登場したが、この人は別格。超然としたところと親しみやすさが同居した独特の歌唱と、ソングライティングの才が抜きん出ていた。予言しよう、間もなく完成する新作で彼女は2010年のグラミーを獲る!
(内本)
YAEL NAIM 『Yael Naim』 Tot Ou Tard
薄型PCの商品名にも合ったエアリーな歌声がTVCMで流れて大ブレイク。イスラエル系フレンチという出自に興味を持った人も持たなかった人も、この囁き声の虜になった。夢想する感覚と楽観性と毒とが混ざった本作で、ジャンルも国も軽々と越境。その柔軟性がステキでした。
(内本)
JAMIE LIDELL 『Jim』 Warp
サム・クックやマーヴィン・ゲイら60's黒人音楽が内包していたポップ感覚。それを80'sのプリンスを通過し、さらにはハウスやヒップホップも通過したうえでの手法で明るく解き放ったのが、モッキーとの共犯によるこれ。屈折を何度かのヒネリでハッピーなポップに転化させるのが2008年型!?
(内本)
JASON MRAZ 『We Sing, We Dance, We Steal Things』 Atlantic
鮮烈なデビューで注目されても2作目、3作目が続かない……という人も少なくないなか、ソングライティングの才にますます磨きを掛け、表現力もアップさせている頼もしい兄ちゃんが彼。新作では柔和さも加味され、人としての器が大きくなったよう。
(内本)
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