REGGAE
気鋭プロデューサーの台頭
ビジー・シグナル“Jail”のような極遅トラックやムンガのオートチューンなど、ヒップホップ色濃厚な最新鋭のトラックがシーンに波及し、アーティスト以上に裏方──特にダセカ軍団やスティーヴン・マクレガー、ドン・コルレオーンらプロデューサーの活躍が目立った。一方、ヨーロッパではルーツダウン界隈の良質な歌モノ作品が人気を獲得。また残念ながらマイキー・ドレッド、アルトン・エリスなど時代を作ったレジェンドの訃報も多かった。寂しい限りだ。
(カシワ)
LUCIANO 『Jah Is My Navigator』 VP
傑作と謳われた『Serious Time』から実に4年ぶりにディーン・フレイザーとタッグを組んだ本作。ボブ・マーリーやピーター・トッシュの名曲を難なくカヴァーし、極上ミディアムを次々と歌い上げる内容に、ヴェテランの底力を感じた次第。このタッグはやはり並みじゃなかった。
(カシワ)
LEE EVERTON 『Inner Exile』 Rootdown
2007年から続くアコースティック・レゲエ人気に伴って、スイスはチューリッヒ生まれの吟遊詩人も日本上陸。幼少の頃からブルース、カントリー、ソウルを聴いていたという豊富な音楽体験によって生まれた憂愁メロディーは、何度聴いても心に沁みました。
(カシワ)
JAMELODY 『Be Prepared』 VP
無名ながらボビー“デジタル”ディクソンの目に留まり、鳴り物入りでデビューを飾ったトリニダード発のシンガーは、2007年のトーラス・ライリーに続き大物の片鱗を窺わせる存在。濃厚ルーツからR&B、ゴスペルの要素を含んだ曲まで歌いこなす才能に、さらなる飛躍を感じた。
(カシワ)
LEE "SCRATCH" PERRY 『The Mighty Upsetter』 On-U
久々にエイドリアン・シャーウッドとのタッグで挑み、70年代にみずから放った名曲群の纏うムードを見事蘇らせた御大。〈レゲエ〉の無限の可能性を提示し続ける彼の歩みは、自伝やディスクガイド本の刊行、〈フジロック〉での来日を通じてより広く伝播した。
(カシワ)
SERANI 『The Future』 Daseca
快進撃を見せたダセカのメンバーであるセラーニが、シンガーとしてもその実力を示したデビュー作。R&B色を巧みにブレンドした爽快感溢れるトラックと、スウィートかつクールな歌声の相性は抜群。新人DJビューグルをフィーチャーした“Doh”もダンスホールのド定番となった。
(カシワ)
ETANA 『The Strong One』 VP
リッチー・スパイスのバックで経験を積んだ信頼保証の歌心、そして発散系のレディ・ソウらに対してじっくりコンシャスな姿勢でジャマイカ女性の現実を代弁する歌詞──ディーン・フレイザーの強力援護を受けて放った初作で、彼女はアコースティック・レゲエ人気を決定付けた。
(カシワ)
NATTY 『Man Like I』 Vides And Pressure/Atlantic UK
リー・エヴァートンの流れを汲み、〈次はこの男だ!〉とシーンから注目を集めたのが彼。ボブ・マーリーの名曲から頂戴したという名前通り、ルーツ・ロック・レゲエの下地をしっかり持ちつつ、持ち味のオーガニック・サウンドでサーフ・ロック好きの心も射止めた!
(カシワ)
BUSY SIGNAL 『Loaded』 VP
大ヒット曲“Jail”や“These Are The Days”をはじめ、超スロウなリディム×スリリングなフロウで現行シーンのトレンドを作った彼。その一方で、マイケル・ローズらラスタと絡んだ曲も披露してスタイルの進化も見せるなど、低迷していたアライアンス・クルーの復権を予兆させる動きも!
(カシワ)
BERES HAMMOND 『A Moment In Time』 VP
ソウルフルな歌声を披露し続ける御大も活動30周年。その記念盤となる本作には、ジャマイカのラジオ・チャートで首位を記録した“I Feel Good”など生音中心の楽曲を収め、世界中のレゲエ人から喝采を浴びた。2008年の代表作というよりも、タイムレスな極上盤。
(カシワ)
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