振り返ってみると、2008年ってどうよ?
出嶌「今年も去年と同じように50枚ピックアップしてみました、ということで。去年は編集長(当時)と俺で選んだんだけど、今年はそれぞれのベスト50をけっこう反映させてみて。まあ基準としては〈2008年っぽい作品〉で入口が多そうなものとか、そんな感じ」
加藤「私はもともとロックが好きなんですけど、この順位を見ればロックはそこまでじゃないんだな……ってのを改めて凄く思いましたね。でも、今年の切り取るべきものが切り取られている感じがします」
山西「逆に全体を見てロックがこれだけ少ないっていうのは、もうそこだけが真ん中じゃないっていうリスナーの声の反映だと思うんですよ。自分はやっぱりここ数年は流行ってるものが凄い好きで、そういう意味でいろんな聴き方をする人がいるから、誰もが認めるチャートみたいなのはできないけど、これぐらいは聴いていてほしい超スタンダードな50枚だと思うし。何だかんだ言って今年も凄く楽しんでいろいろ聴いたな~っていうのが蘇ってくる感じ?」
出「よく喋るね」
山「眠いんで。例えば2008年は、大学出たぐらいからあんまり日本語ラップを聴いてなかったんですけど、それでもSEEDAやAnarchyには衝撃を受けたし、凄い楽しかったです」
加「確かに、ロックの真ん中加減に飽きてきたっていうのはあるかもしれない。特に2008年はエレクトロニックなものがもてはやされたって感じがして。生声をオートチューンで電気的にしたりとか、クンビアもデジタルだったりだとか、そっちに意識が行ってた気がします」
出「まあ、まだ世の中的にもロックが真ん中なんだろうなって思う部分も俺はあるけど、CDショップとかメディアに関わる人たちとかの考えるロックっていうのが狭いんちゃう?とは思ったりするね。俺は自分で選んでて、50枚のなかに凄くロックが多いなと思ってるんだけど」
加「そうですか? 多くはないんですけど」
出「ロックっていうか……まあロックですよ」
加「ロック好き向けの盤が多いってこと?」
出「そうそう、〈ロックとは?〉っていう解釈の話じゃないんだけど、原理主義者みたいな人がロックっていうものをどんどんちっちゃくしようとしてるな、っていうのを凄く感じる。何かね、女の子がやってたら〈それはポップスでしょ〉とか、ちょっと4つ打ちが入ってきたとかエレクトロっぽい曲があったぐらいで別物扱いにしたり、騒がんでもいいでしょ、というか。傾向を分けて勝手に括ったりするのは楽しいし、ハイプなサブジャンルとかが出てくるのは大好きなんだけど、何かそういうのに本気で縛られてんの?とか愕然としたりする瞬間はまた増えてきた。っていうか、さっきからロックロック言いすぎだよ。例に挙げてるだけで、ホントは別にロックに限ったことじゃないんだし」
山「饒舌ですね」
出「眠いからね。で、名称が好きなのか音が好きなのか、楽器持った人が3~4人立ってる画が好きなのかわかんないけど。で、世間一般のリスナーの人は原理主義的にならずに普通に楽しんでると思うし、アーティストもそう思ってる人は多いと思うから、やっぱりその媒介になる人たち、情報の送り手側が偏狭な雰囲気でいると凄くギャップができてしまう」
山「誰でも聴けるジャンルレスなものも多いですけどね」
出「それも〈ジャンルレス系〉っていうジャンルみたいになってるでしょ……っていうか、去年も同じことを編集長(当時)と話してた気がするわ」
加「口調も編集長(当時)と近いですね」
出「それは去年も今年も俺が原稿を書いてるからですよ。関西弁は文字に起こしづらいし。ついでに君らの発言も可愛らしくいじってるから」
加「恐れ入りましゅ。ということで、50枚の話に戻りますが、1位がリル・ウェインで」
山「出嶌さんの1位はウェインだったんですか?」
出「曲単位だと、3ケタ再生してるのはティファニー・エヴァンスの“Promise Ring”とか。通勤中に片道丸々同じ曲を聴くぐらい聴いて」
山「狂ってますね」
出「それぐらいのものしか本当にイイ曲とは呼べないんじゃないの? アルバムだとジーズィかT.I.かリック・ロスかラヒームか……。でもウェインは3人とも上位に入れてたし、1位に相応しい」
加「ウェインさんは何が良かったんですかね? 自分も1位にしておいてナンですけど。あんまりヒップホップとか聴かなかったのに、ジャケがべらぼうに可愛かったこともあって……」
山「半年ぐらいPCの壁紙にしてますよね」
出「それは加藤さんがいままでヒップホップを聴いてなかっただけで、聴いたら普通に好きなのがいっぱいあるんじゃないの?」
加「〈私はこれが好きだから〉って思い込みすぎてる部分って誰にでもあると思うんですよね。私は特に今年は、ホントに自分が好きなものがあるんじゃないかなっていうのは凄く感じさせられて。だから、同じことをたくさんの人に思ってもらえるような記事を作らなきゃ、っていうことですよ」
出「そういうことです」
一同「では、2009年もbounceをよろしくね!」
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