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WHAT'S R&B

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2008年12月18日 12:00

更新: 2008年12月18日 17:39

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/出嶌 孝次

 遠回りから始めます。akikoがリリースした〈What's Jazz?〉なる連作が興味深いのです(レヴューはこちらをどうぞ)。そこで彼女は30~60年代の形式にこだわって古式ゆかしい歌を聴かせる〈STYLE〉編と、本来モダンで自由であるべきという〈ジャズ〉の精神性を体現すべくクラブ系のクリエイターと組んだ〈SPIRIT〉編という2枚のアルバムで、〈What's Jazz?〉という命題に2つの回答を用意しているんですね。恐らく、前者を〈こんな昔の型にこだわるなんてジャズじゃないね〉なんて言う人もいるだろうし、後者を聴いて〈クラブっぽいポップスじゃねえの?〉と思う人も多いでしょう。しかしながら、その両面を併せ持ち、曖昧に共存させているのが、いまジャズと呼ばれる音楽なんですね。

 で、その〈ジャズ〉は〈ロック〉でも〈パンク〉でも〈ヒップホップ〉でも多くの曖昧なカテゴリー名に置き換え可能なものだったりします。パンク精神を貫いて先人と同じことをやらないのもパンク。いかにもな服装と3コードのバンド・サウンドで歌うのもパンク。DJプレミアの音をがんばって再現するのもヒップホップ。トランスやエレクトロを採り入れてアップデートされていくのもヒップホップ。モッズ・ファッションでうろうろするのもモッズ。モダンであるためにモッズ・ファッションを捨てたポール・ウェラーもモッズ……って、別に字数稼ぎじゃないですよ。とにかく、さまざまなジャンルやカテゴリーには、このように単純に二元化できない背反する要素が曖昧に内包されているし、そもそも言葉自体にも狭義と広義があるから一口で言い切るのは難しいということです。
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