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LUAKA BOP PRESENTS AROUND THE WORLD TOUR! 主宰レーベル=ルアカ・バップ作品から見る、デヴィッド・バーンの〈端っこの、ちょっと変わったポップ・ミュージック〉という音楽的嗜好

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2008年12月11日 11:00

更新: 2008年12月11日 17:35

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/ダイサク・ジョビン

 トーキング・ヘッズ時代にも、バーンはフェラ・クティのアフロビートやキング・サニー・アデのジュジュ・ミュージックなどアフリカン・ファンクを大胆に取り込んでみたり、イーノとのコラボ・アルバム『My Life In The Bush Of Ghosts』でアルジェリアやレバノンといった北アフリカのアラブ歌謡をサンプリングしたりしていたが、80年代後半にルアカ・バップを設立して以降、70年代西アフリカの天然サイケデリックなダンスホール楽団の音源を集めたコンピ『World Phychedelic Classics 3: Love's A Real Thing』や、アジェリア生まれ/フランス在住のベルベル人歌姫によるユニット=ジュリ・ジュラ、ベルギーとザイールのピグミーとのハーフであるマリー・ドルヌを中心としたザップ・ママなどを積極的に紹介。また、ソウルやゴスペル、ニューオーリンズ・ファンク、カントリー、テックス・メックスなどアメリカン・ルーツ・ミュージックを取り込んだ曲もキャリアを通じて多いだけに、レーベル・オーナーとして70年代のカルト・ストレンジ・ソウル・ミュージシャンであるシュギー・オーティスのリイシューで再評価の気運を上げたり、変態オールド・カントリー/フォークを聴かせるジム・ホワイトをフックアップしたりもしている。

 一方、ブラジル育ちであるNYの盟友アート・リンゼイの手引きもあって、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、トン・ゼーなどブラジルのカウンター・カルチャー時代に花開いたトロピカリズモの斬新なサウンドや、ブラジル北東部の土臭いパーティー音楽であるフォホーやサンバなどを次々と紹介し、自身もモレーノ・ヴェローゾらによる〈+2〉プロジェクトやマリーザ・モンチなど現行ブラジル音楽シーンに、アート・リンゼイや坂本龍一らと共に積極的に関与していくことで、90年代以降の世界的なブラジル音楽ムーヴメントの火付け役となった。

 また、ヘッズ後期からソロ初期作でもっとも熱を上げたラテン・ミュージックにおいては、NYの隣人であるファニアの顔役たちと積極的に絡み、サルサのみならずメレンゲやクンビアなどカリブ周辺の音楽に手を付けつつ、古き良きキューバ音楽などを紹介する〈Cuba Classics〉シリーズも発表して、後の世界的な〈ブエナ・ビスタ〉現象のきっかけを作ることに。さらに、スザンナ・バカなど知られざるアフロ・ペルーの音楽や、ヴェネズエラの軽薄でオシャレなパーティー集団であるロス・アミーゴス・インヴィシブレスをはじめ、ラテン諸国で新たに勃興していたロック・エン・エスパニョール(スペイン語のロック・ムーヴメント)のド真ん中にみずから飛び込んでいき、火に油を注いだことも注目しておきたい。その流れは現在のマヌー・チャオを筆頭とするヨーロッパ~ラテン・アメリカを結ぶ一大ミクスチャー革命にも確実に受け継がれているのである。

 ちなみに、アジア音楽関連では〈踊るマハラジャ〉よりもずっと前にインド映画音楽のオモシロさに気付いてコンピをリリースしたり、オキナワの喜納昌吉を紹介したり、UKエイジアンによる新たな潮流にいち早く着目してコーナーショップを売り出したりも。

 こうしてルアカ作品を並べてみると、トーキング・ヘッズ時代から続くバーンの音楽的パンク・アティテュードと、プラネット(notグローバル)的視点からのポップ観がよく伝わってきますね。
▼ルアカ・バップからリリースされた作品の一部を紹介。


シルヴィオ・ロドリゲスの編集盤『Los Clasicos De Cuba 1: Silvio Rodriguez』(Luaka Bop)


コンピ『Luaka Bop Sampler: Bop! En Espanol』(Luaka Bop)

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