ディスクガイド(2)
RICHIE HAVENS 『Nobody Left To Crown』 Universal
69年の〈ウッドストック〉における熱いパフォーマンスで一躍名を知らしめた、黒人フォーク・シンガーの最新作。あのステージから40年近くを経ているのに、野太くて豪放なヴォーカルも、ジャカジャカと掻き鳴らされるギターも変わらず個性的だ。独特の渋味を湛えたアーシーな肌触りは、元祖オーガニック系といった感もあり。
(北爪)
SUN KIL MOON 『April』 Agua Verde
レッド・ハウス・ペインターズ時代から一貫して斜陽の世界を描き続けてきたマーク・コズレクによる(ほぼ)ワンマン・プロジェクト。圧倒的な深みを湛えた歌声とモノクロームなメロディー、繊細なアコギのアルペジオと激情エレキの交錯が、絶えず涙腺を刺激し続ける。陽が完全に落ちる直前の仄かな光に希望を感じる人ならば、ぜひチェックしてほしい。聴けばわかる!
(田中)
JAKOB DYLAN 『Seeing Things』 Columbia
ウォールフラワーズでのエレクトリック・サウンドとは異なる、生音中心の実にフォーキーな仕上がりとなった初のソロ・アルバム。となるとどうしてもボブ親父を連想してしまうが、シンプルな演奏のなかに時折ハッとするほど美しく耳に馴染むメロディーを散りばめているあたりには、むしろエルヴィス・コステロを思わせるポップ職人的なセンスが窺えて頼もしい。
(北爪)
RY COODER 『I, Flathead』 Nonesuch
さすらいのギタリストが誘う架空の楽園への旅──。みずからが書き下ろした小説の主人公を題材に、自動車レースや遊園地、ナイトクラブといった〈古き良きアメリカ〉をレイドバック感たっぷりに紡いで見せた、いわゆる〈カリフォルニア3部作〉の最終章。浮世離れしつつも、やけにノスタルジックなムードは流石だ。イイ塩梅に酔っ払ってから聴くことをオススメしたい。
(田中)
DAMIEN JURADO 『Caught In The Trees』 Secretly Canadia
シンプルで力強いフォーク・ロックと哀愁のメロディーを武器に、熱心なファンを獲得してきたUSインディー界きっての実直男、ダミアン・ジュラード。情感豊かなヴォーカルに、素朴なコーラス、そして感情の赴くままに掻き鳴らされるギター……やはり今回も徹底して彼らしい仕上がりだ。それはまるで〈次世代のニール・ヤング〉と表現したいほど!
(田中)
BILLY BRAGG 『Mr. Love & Justice』 Anti-/Epitaph
〈1人クラッシュ〉と呼ばれるほどに熱い庶民派シンガーが、反骨のレーベル・アンタイに移籍しての第1弾。デビュー時からその反権力的姿勢を曲げていないのと同様に、シンプルなギター・サウンドも貫きとおしている。秋の夜長に物思いに耽るのも悪くないが、硬派なギターに乗せて紡がれる、真摯な心意気に満ちた歌と詞に耳を傾けてみるのも一興だ。
(北爪)
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