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特集

Primal Scream

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2008年07月31日 10:00

更新: 2008年07月31日 17:39

ソース: 『bounce』 301号(2008/7/25)

文/妹沢 奈美


  プライマル・スクリームほど、ファンが夢中になった時期によって、そのイメージがさまざまに異なるバンドも他にあまりいないだろう。何しろプライマルの結成から24年の歴史を貫くものはただひとつ、〈変化〉というタームのみ。音楽性もカメレオンのように折々の状況や流行を呑み込みつつ変化し、特にボビー・ギレスピー(ヴォーカル)の資質から導かれる政治的/社会的な目線も、バンドの状況によって濃度を変化させながら楽曲に織り込まれている。それだけでなく、メンバーもライヴ・サポートも頻繁に変わり、とにかく彼らはひとつのスタイルに留まることがない。そしてそれこそが、常にプライマル・スクリームを魅力的にしている理由に他ならないのだ。

そうやって長い年月を走り続けた結果、現在の彼らはロックンロールというものをどう捉えているのか。ニュー・アルバム『Beautiful Future』の取材の際に、ボビー・ギレスピー(以下同)はこう語っている。

「ロックンロールはジーン・ヴィンセント、バディ・ホリー、ジェリー・リー・ルイス、リトル・リチャードの世代がベストさ。あれを超える世代はいないよ。彼らの後にロックンロールは死んだんだ。それからもストゥージズやMC5やセックス・ピストルズみたいな偉大なバンドは出てきたけど、たぶんその前の世代ほどの力はなかったと思う。俺はそこにいたわけじゃないから断言できないけどね。彼らはただ良いレコードを作っただけさ。で、俺たちにできるのも、グレイトなロックンロールを演奏するだけ。他にできることや、伝えられることはないね。後から振り返れば、どのバンドも大して革命的じゃないと思うよ。ロック・バンドが自分たちのことを革命家だって言うのは、思い上がりだね」。

97年の『Vanishing Point』、2000年の『Xtrmntr』、2002年の『Evil Heat』といったいわゆる〈エレクトリック3部作〉以降のボビー・ギレスピーに魅了され、彼のことをロックンロール・アイコンであり政治面に先鋭的な革命家だと思っていた人にとっては、いささかショッキングな発言だろう。もっとも、それ以前のプライマルを知る人には、この言葉の持つ音楽史上主義的な価値観に、不変の〈何か〉を感じるかもしれない。

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