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特集

耳で聴いたピープル・トゥリー

ビーチ・ボーイズをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ

1 フリッパーズ・ギター
『ヘッド博士と世界塔』
 ポリスター(1991)
“God Only Knows”をサンプリングした“ドルフィン・ソング”でいきなり幕を開ける超ポップ名盤。他にも“Heroes And Villains”や“Good Vibrations”などの断片が随所に挿入されたこのアルバムが、渋谷系界隈での〈『PET SOUNDS』以降のビーチ・ボーイズ再発見〉を促すことに。
(北爪)

2 VAN DYKE PARKS
『Song Cycle』
 Warner Bros.(1968)
『Smile』という絶対に解けないパズルを、若き日のブライアンとヴァン・ダイクは手にしてしまった。両者はロック史に対して永遠の謎を投げかけた罪な音楽家だ。本作での壮大なポップス絵巻を聴いていると、『Smile』に対する無念さみたいなものを感じて胸が痛くなる。そこには美しさも見えてしまうのだが……。
(桑原)

3 ROGER JOSEPH MANNING JR.
『Solid State Warrior』
 Roger Joseph Manning Jr.(2006)
かつて在籍していたジェリーフィッシュ自体にもビーチ・ボーイズの影響は散見されたが、ソロに転向してからのパラノイアックかつインドアな万華鏡的ポップ世界は、より60年代中~後期のビーチ・ボーイズとの近似性を感じさせる。現在のブライアンのバック・バンドに加入してくれることを密かに期待。
(北爪)

4 DAEDELUS
『Invention』
 Plug Research(2002)
地下に生息しているイメージの強いLA発のブレイクビーツ王子ですが、登場時はもっとお日様の匂いを漂わせていたわけで……。で、センティメンタルでロマンティックな楽曲を詰め込んだこのファースト・アルバムが、テクノロジーを駆使したエレクトロニカ版『All Summer Long』として聴こえてしまうのは私だけ?
(山西)

5 ELTON JOHN
『Caribou』
 DJM(1974)
敬意を持ってビーチ・ボーイズをパロディー化した“Crocodile Rock”(のちに本人たちもカヴァー!)を発表し、数年後にビーチ・ボーイズが使用していたスタジオで本作を録音したエルトン。その時、ブルース・ジョンストンらが麗しいコーラスを提供している。両者は愛し愛されている素晴らしい関係なんだ。
(桑原)

6 THE THRILLS
『So Much For The City』
 Virgin(2003)
現代最強の直球チルドレンといえば、アイルランドから現れたこの5人組でキマリでしょ! ブライアンよりもブライアンらしい無垢で甘酸っぱいメロディーを武器に、バンド名とは真逆ののほほんとしたサンシャイン・ポップを大展開。雨の多い国に生まれたからこそ、ウェストコースト・サウンドに強く憧れてしまうのね。
(山西)

7 VAMPIRE WEEKEND
『Vampire Weekend』
 XL(2008)
現代最強の変化球チルドレンといえば、NYから現れたこの4人組でキマリでしょ! アフロビートやスカなどを採り入れたサウンドはパッと聴きビーチ・ボーイズとはかけ離れたもののように聴こえるけど、ドリーミーでひねくれたポップソングの数々は絶対に『Pet Sounds』の影響下にあるはず。
(山西)

8 KEITH MOON
『2 Sides Of The Moons』
 Polydor(1970)
ザ・フーのドラマーだった彼は、こよなくビーチ・ボーイズを愛した男でもあった。『Pet Sounds』のリリース時にはその宣伝に無償で奔走。いつかはいっしょにドラムを叩けると本気で思ってもいたらしい。そして、この唯一のソロ作でもヘナチョコな“Don't Worry Baby”のカヴァーを披露。これが実に泣ける。
(北爪)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2008年07月23日 11:00

更新: 2008年07月23日 17:36

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/北爪 啓之、桑原 シロー、出嶌 孝次、山西 絵美

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