The Beach Boys
いつの頃からだろう、〈ビーチ・ボーイズの最高傑作は『Pet Sounds』である〉というのが常識のようになったのは。いや、その意見に異論はないし、個人的にも生涯の愛聴盤だと思って譲らないのだけれど、彼らの歴史を俯瞰しみてもやはり『Pet Sounds』はきわめて特異な作品であり(それゆえ孤高の輝きを放っているのだが)、その一枚さえ押さえておけば万事OKということには決してならないと思えるのだ。CDショップの店頭スタッフである僕は、彼らのカタログのなかでもズバ抜けて『Pet Sounds』が売れ続けていることを知っている。それはつまり、多くのリスナーにとって彼らの最初にして唯一のアルバムが同作であることを意味している。時代の求める音として支持されることを嬉しく思う反面、僕はどうしてもその事実に一抹の不安を感じてしまうのだ。あまりにも巨大な作品が大きな影を落としていることで、ビーチ・ボーイズが持つ魅力の数々がかえってリスナーに伝わり難くなっているのではなかろうか、と。それが杞憂であることを願いながらも、ビーチ・ボーイズのほぼ全作品が紙ジャケでリイシューされるこの2008年の夏という絶好の機会に、バンドの歴史をざっくりと追いながら、できる限りフラットな視点でその多様な魅力を紐解いてみたいと思う。
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