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RETURN OF "EXPERRYMENT" SOUND!! 生涯現役を貫く彼が気合の新作を投下! 〈生きる伝説〉の旅は終わらない……

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2008年06月19日 11:00

更新: 2008年06月19日 17:00

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/鈴木 智彦

  正直に白状してしまえば、60~70年代のペリー関連作品をとことん愛聴しつつも、エイドリアン・シャーウッドを共同プロデューサーに迎えて作られた90年作『From The Secret Laboratory』を最後に、ペリーの新録作品が僕の愛聴盤となったことはなかった。〈悪くはないのだけど物足りない〉と常に感じ続けたそのいちばんの理由は、90年代以降の作品にはペリーのプロデューサーとしての腕前がほとんど発揮された形跡がないからだ。他のクリエイター主導によるサウンド・プロダクションにペリーのヴォーカルが素材として乗っているだけのような作品の数々は、一度聴いてまた繰り返し聴きたくなるようなシロモノではなかったのである。36年生まれというからすでに90年代中盤には還暦を過ぎ、〈流石のペリーの独創的な創造力の泉も枯渇したのか!?〉と失礼ながらなかば諦めかけていたのだ。

 ところが、今回のニュー・アルバム『The Mighty Upsetter』を聴いて本当に驚いた。ペリーの音楽がもっとも妖しい輝きを放っていたブラック・アーク時代の作品と比較しても聴き劣りしない、質とテンションを備えたナンバーが次々と飛び出してくるではないか! まず耳を引くのはアーク時代のさまざまな名曲を素材に、それを新たに録り直したトラックメイキングだが、それが単なるセルフ・リメイクに終わらず、一曲の中で複数曲のマテリアルがコラージュされているなど、新たなオリジナリティー追求の精神性が随所に盛り込まれている。そのアイデアや実践はシャーウッドの創造性や手腕に負うところも大であったであろうことは想像に難くはないが、〈ペリーのアイデアや創意工夫などもアルバムの随所に盛り込まれている〉ということを、シャーウッド自身がアルバム制作後のインタヴューで述べてくれてもいるので、ここではその証言を信じたいと思う。

 声量こそ落ちたものの、まだまだ十分溌剌として生命力に溢れたペリーのヴォーカル。そして、ブラック・アークのクリエーションを現代に蘇らせながら十分今日性も備えた、エッジの立ったサウンド・プロダクション(ルーツ・マヌーヴァやLSK、ゲットー・プリーストといった若い世代のゲスト参加もその〈今日性〉を手助けしている)。60~70年代のペリー作品が放っていたエネルギー──抑圧された魂を音楽で解放し続ける力──が、『The Mighty Upsetter』には溢れている。リー“スクラッチ”ペリーはまだまだ本気だし、正気だし、なによりもヤル気満々のようだ。
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