LEE "SCRATCH" PERRY
「ドラムは心臓が刻む音だろ? それで、ベースが頭脳(ブレイン)だ。俺はブレインを持っていないから、レイン(R-A-I-N)って呼んでいるんだけど。そこにヴァイブレーションがあるんだ、美しき音の波動が。でも、実際、ブーン、ブーンって音は(胸を叩きながら)ここからくる。この2つが揃って完璧になる。ハートと思考がひとつの世界を作り出すんだ。これでわかったかな?」。
ビースティ・ボーイズが監修した幻の雑誌「Grand Royal Magazine」第2号に掲載されたインタヴューのなかで、〈ダブをよく知らない人に、簡潔にダブとは何か教えてもらえますか?〉との問いに対するリー“スクラッチ”ペリーの答えだ。
〈鼓動と思考が作り出す、完璧な世界=波動=ダブ=音楽〉──これほど明快に真理を説明できる人を〈狂人すれすれの天才〉で片付けるのは、やはりマズいだろう。ジャマイカが生んだ最高のプロデューサー/エンジニアがリー・ペリーだ。レゲエに疎い人でも、〈ボブ・マーリーの世界的ブレイクを支えたプロデューサー〉と書いたら、〈おっ!〉と感心するか。本稿を書くにあたって、担当編集者とめざしたのは〈敷居の低いリー・ペリー論〉。何でも、ペリー爺は小難しくて、とっつきにくいイメージがあるそうで。500ページの自伝がある人の経歴をこのスペースにまとめるのが土台無理な話で、悩んでいるうちに、私も簡潔な真理に気付いてしまった。『Heart Of The Congos』を聴いて美しいと感じない人、『Super Ape』を聴いて〈何だかよくわからないがこれはスゴい!〉と思わない人に、いくら敷居を低くして説明してもムダ。だって、そういう人は音楽を身体で聴く習慣がないのだから。
と、切り捨てご免!な態度に出てしまったが、膨大な作品群がリリースされ、時代/国境/職種を跨いで活躍しているがために、〈どこから手を付けていいのやら〉とためらったり、何枚か聴いてみたけどバラつきがあって余計混乱してしまったり、という事態はわかる。
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