アーバン体験に終わりはない……(2)
TONY GRANT
『Grant Life』 Tra'face(2007)
なかなか実体の見えないスーパー・グループ、ブレイズの一員でもある元アズ・イェットのシンガーが放った初のソロ作。清潔感を残したまま伸びていくヴォーカルが、本来の意味でのアーバンなロマンティシズムを体感させてくれる。少し歌い上げすぎている部分も、却って新鮮に響いてくるはずだ。
MARC NELSON
『Marc: My Words』 Lyric Master 911(2007)
上掲のトニー・グラント同様に元アズ・イェット~現ブレイズ、さらには元ボーイズIIメンでもある実力派シンガーのソロ3作目! 真摯にノドを震わせてメロウな歌世界をスムースに展開してくるが、ベイビーフェイスの片腕だけあって、雰囲気に逃げないしっかりしたメロディー作りも魅力的だ。
JAHEIM
『The Making Of A Man』 Divine Mill/Atlantic(2007)
ハズレ知らずな男の4作目。むせ返るほどソウルフルな濃縮黒蜜名盤だった前作『Ghetto Classics』と比べればいささかライトでブライトな口当たりではあるかも。ただ、〈ゲットー・ソウル〉の看板をあえて下ろし、ルーサー・ヴァンドロスら普遍的な先達をめざした心意気は伝わる!
TREY SONGZ
『Trey Day』 Songbook/Atlantic(2007)
〈濃さ〉だけではなく〈薄さ〉のなかにも黒い色気を感じさせるのがアーバン歌手としての技量だとしたら、彼の濃密な薄さ(?)にはサム・クックにも通じる艶がある。R・ケリーを意識したようなスムース歌唱とモロにRなシンギン・ラップを披露した今作でも独特のジェントル感が薫ってくるのだ。
CUPID
『Time Foe A Chance』 Asylum(2007)
振り付けも込みのダンス・チューン“Cupid Shuffle”の打ち上げ花火感ゆえか微妙に一発屋っぽいイメージのある人だけど、サウス・マナーのクランク~スナップス系フロア・チューンだけじゃなくて切々とした表現力で聴き手をググッと引き込むスロウもお忘れなく。うっすら漂うローカル臭も芳しい。
PRETTY WILLIE
『The Transition』 トイズファクトリー(2008)
ネリーと同じセントルイスの出身で、彼を模倣した〈歌うラッパー〉スタイルで一度はメジャー入りも果たした人だが、その実はシンガー志向だった模様。本作は同名のローカル盤にミックステープ曲などを加えたベスト仕様的な一枚となり、温かい歌声と粋な色男ヴァイブの交錯がソウルフルなのだ。
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