Mark Stewart
伝説は現在進行形で更新されている!
なぜなら俺がいるからさ
「完成したから発表しようと思っただけさ(笑)」――オリジナル作品としては『Control Data』以来12年ぶりのリリースなのに、人を喰ったような口ぶりでそう切り出すマーク・スチュアート。ブリストルで生まれた彼は、70年代にダブ~ファンク~ジャズ~パンクの融合を試みたポップ・グループでの活動を皮切りに、UKにおいてパンクとレゲエの橋渡し役となったニュー・エイジ・ステッパーズ、そしてソロ活動を通じてラディカルな音を追求してきた。政治的スローガンや過激な発言もたびたび発し、人々に刺激を与え続けるその存在は、やがて〈カリスマ〉として崇拝されるようになる……のだが、どうも本人はそういう扱いに居心地の悪さを感じているらしい。
「かなり変な気分だね。友達のほとんどが一般人で、音楽の仕事については一切話さない。ある人は億万長者並みに金持ちで、ある人は普通の生活を送っている。でもかつて俺らは同じクラブに通い、同じ音楽を聴いて育ったんだ。だからそういった意味では平等なんだよ。俺らがパンクから学んだのはこういうことだ、特別な人なんていないってね」。
そうマジメに話す一方、「俺は自分が〈伝説〉になることを4歳の頃から知っていた。誰も信じてくれなかったけどね(笑)」なんて言ってみたり。意外と気さくな人である。そんなチャーミングなマークがニュー・アルバム『Edit』のレコーディングに選んだ街は、故郷のブリストルやロンドン、ベルリン、ウィーンなどなど。
「母親がジプシーの血筋を引いてるからな。それにここ最近、イビサ、ウィーン、ロンドンをはじめいろんな街へと引っ越した。ちなみにいまはベルリンに住んでるよ」。
多くのアーティストがベルリンに拠点を移しているなか、まさかマークまで! 彼自身、気になる音楽を見つけたらその制作者を探しに行ってしまう放浪癖があるそうだが、そんな彼を惹き付けたベルリンの魅力とはいったい何?
「俺だな(笑)。ベルリンは非常に注目される街となった。なぜなら俺がいるからさ。ガールフレンドも、母親も、さっきインタヴューにやって来たジャーナリストも、みんな俺のことを最高だって言ってたし」。
……前置きはさておき、「〈ベルリンの壁〉が崩壊してからこの街は本当の意味での交差点となって、世界中から人々が集まる場所となった。まさに人種の坩堝だ。新しいこともここから始まっているようだし、実際にいまベルリンで何が起こっているかは、きっと10年後にわかると思う」。
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