こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

Lenny Kravitz(3)

いよいよ愛の革命を起こす時がきた!

 そんなシングル・ヒットが続いたところで、2001年に初めて自身の名前をタイトルに掲げた6作目『Lenny』を発表。ここらからは大ヒット・シングルこそ生まれなかったものの、作品としての評価は高く、〈優れたアルバムを作れるアーティスト〉だという認識を改めて獲得することに成功する。しかしアップダウンの激しい人なのか、ふたたび上昇気流に乗ったと思ったところで、2004年の『Baptism』でまたもやファンを困惑の渦に巻き込んでしまう。ダークな雰囲気に包まれた内省的な同作は、楽曲としての魅力に欠けていたというよりも、演奏やアレンジ面での魅力に乏しく、何とも歯切れの悪い印象だった。とはいえ、そこで沈没してしまうレニーでないのはすでにご存知のとおり。このたびのニュー・アルバム『It's Time For A Love Revolution』で、まるで不死鳥の如く蘇っている。

 この通算8枚目にあたる新作は、すでに〈レニー大復活!〉の声があちこちから上がっている。粗削りなロックやファンキーなソウル、感傷的なバラードにセクシーなラヴソングなど、どの曲を取っても驚くほどフットワークは軽やかで、焦点がピシッと定まっている。デビュー作『Let Love Rule』と比較されることが多いのも頷けるし、ひと皮剥けたかのように吹っ切れたムードと生き生きしたヴァイブが漲っている。数年前に亡くなった父親についても“A Long And Sad Goodbye”という曲で回顧。レニーが15歳の時に家を出たのは、浮気性の父と暮らすのが辛かったからだったそうだ。またイラク戦争についての“Back In Vietnam”など、歌詞の面でも興味深いテーマが取り上げられている。

 98年から4年連続でグラミー賞の〈ベスト男性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス部門〉を獲得し、全世界でこれまでに2,000万枚以上のアルバム・セールスを誇ってきたレニー。歌はもちろんのことギター、ベース、ドラム、キーボードといった楽器をひとりでこなし、作詞、作曲、プロデュースまでをやってのけてしまう。デビューから18年あまり、常にクラシック・ロックの素晴らしさを追求し、それを届けようとしてきたのもこの人の特徴だ。レッド・ツェッペリンの復活ムードに乗せられて、巡り巡っていまこそクラシック・ロックの時代が到来したと思っている人もいるかもしれないが、レニーに言わせれば、一瞬たりともこういった音楽が輝きを失ったことはなかったはず。懐古趣味なクラシック・ロックの良さではなくて、いつの時代にも不変な音楽としてのクラシック・ロックの魅力――レニー・クラヴィッツという類い稀なるアーティストがこだわってきたのは、そういう単純なことだ。事実、レニーのこれまでに発表してきた作品を聴き返してみても、まったく色褪せていないどころか、ますます堂々とした輝きに満ち溢れているのである。

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2008年03月19日 12:00

更新: 2008年03月19日 16:52

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/村上 ひさし

インタビュー