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特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2008年02月28日 18:00

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/一ノ木 裕之

風味豊かで薫り高い、日常に煙るブレイクビーツ

 「ドラムのタイトな音楽がもともと好きだったんですが、そのうちにエイフェックス(・ツイン)みたいなイカれたドラムの音楽を聴いて、とりあえず耳コピしようかなと思って。それでドラムマシーンを買って、打ち込んでみたのが最初。いまも作る感覚的には変わってないですね、全然」。

日々出会うさまざまな音楽のなかから光る一瞬をループとして掴まえ、気持ち良いメロディーやビーツに変えていくDJ/ビートメイカーのOlive Oil。博多を拠点に活動し、しなやかなセンスでジャンルを跨ぐ彼の音楽は、別名義のsoloal oneでROMZからリリースした2枚のアルバムや、RAMB CAMPのMCであるFreezeと組んだEL NINOでのアルバム、さらにはBIG JOE(MIC JACK PRODUCTION)関連作でのプロデュース・ワーク、JUZU a.k.a. MOOCHYとのスプリットEP『FUTURE DUB SESSION』、またはリリースを控えるKiller Bong(THINK TANK)とのコラボなど多岐に渡っている。加えて、映像/グラフィックを手掛ける実弟のPopy Oilと共に運営するOil Worksでは、10タイトル以上にのぼるミックスCD(全曲オリジナル・トラックのものも含む)をはじめ、Tシャツやリングなども世に出している。そうした旺盛な展開も、「出来上がったものがすぐ出せるだけで普通だと思います」と笑って話す彼にとって、すべてはロール・プレイング・ゲーム以上に楽しい最高の遊びであり、その時々の気分やノリに大きく左右されながらも、常に日々の中心にあるものだ。

「寝起きに速攻でビートを作っちゃう時もあるし、ひとつの部屋でループを爆音でかけておいてわざと隣の部屋に行ってそれを聴きながらまた曲を作るとか。とにかく、一日のほぼ半分は機材に触ってて、半分はモノ探しをしてますね。サンプリングのネタを探したり、リミックスしなきゃいけないデータを探したり、領収書を探してたり(笑)」。

  みずから「ほぼ打ち込みで、より実験的な方向性のもの」と話すsoloal oneの2作目『ANTENA』に続き、Olive Oil名義のセカンド・アルバムとして彼がこのほど発表したCD2枚組の『Spring Break』は、前作『FULL OF SPECIAL MEMORIES』のアウトテイクがベースになったもの。持ち前のサンプリングの展開力と雑多な鳴りを幾重にも掻き混ぜることで、瑞々しいサウンドを晴れやかに才気走らせていた前作に対し、今回の『Spring Break』では曲の中心を成すループそのものを深く響かせる作風がより前面に出ている。

「コンセプトは〈ユルユル〉。音数も少なめのやつで聴きやすい、何回も聴ける作品ばかりを詰めたかった。実験的な部分はいまもすごい好きなんですけど、たくさんの人に聴いてもらうためにポイントポイントに絞って、そこに詰め込む感じにしました」。

先述した相棒のFreezeをはじめ、Nuffty、Innoら周辺MCのラップも交えて聴かせるDisc-1と共に、そこには未収録となった新曲や別ヴァージョンなども含むDisc-2は、全曲オリジナル・トラックで送るミックスCD仕様のもの。彼自身のミックスは、とりとめのない日々から生まれる楽曲を通じて、彼のライフスタイルの一片を風通し良く伝えてくるかのようだ。重ねて今回のアルバムについての彼の言葉を引こう。

「どんな空間にも合うと思うんで、環境音楽みたいな、そんなノリで聴いてもらえばいい。3月4月ってみんなが移動するじゃないですか。その時に持っていってもらいたいし、新しい土地に行ったときにもゆったりとした気持ちで聴いてもらいたい」。

今年はDJ活動に力を入れる一方、より実験的な作品の制作もすでに開始しているOlive Oilには、海外のレーベルから複数のオファーが来ているという。今後はいよいよそのリリースも見えてきそうだ。「12か国からオファーがあれば月イチで出せるかな」と冗談めかす彼だが、その瑞々しいセンスは、ビートが繋ぐ世界地図にすっぽりと居場所を用意することだろう。

▼文中に登場したコラボ相手の作品を紹介。

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