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特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2008年02月28日 18:00

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/出嶌 孝次

多様に広がるブレイクビーツの気分

 この特集では、いろいろな意味で気持ち良く楽しめる、快楽的で聴き心地の良いブレイクビーツを紹介しています。ヒップホップの作り方のひとつとして生まれた〈ブレイクビーツ〉とは、いろんな過去の音源から〈いいところ〉をサンプリングして音楽を組み立てる手法そのもののことですが、そのサンプリング・ループはいまや多様なムードを醸し出す心地良い音楽として改めて幅広いリスナーに親しまれるようになっている……というわけですね。

で、その心地良さが味わわれるようになったのはいつからか考えると、90年代のNYヒップホップで頂点とされたDJプレミアやQ・ティップ、ピート・ロックらによる芸術性の高いループ・トラックが、ラップ・ミュージックとしてよりも(言語の壁がない)ビート・ミュージックとしての側面を重視する傾向を生み出し、特にUSの外に広がったのだと思われます。そして、2000年代。多様なスタイルのブレイクビーツ音楽が世界中でさまざまな発展を遂げていくなかで、90年代のNYマナーを〈黄金期〉と呼んでその末裔たちを追い求めるリスナーの思いと、よりリスニング・フレンドリーな音楽をナチュラルに求める非ヒップホップ・リスナーの思いが重なり合った結果、現在のような隆盛が生まれてきたのではないでしょうか。それは時としてイージーリスニング~BGM的ですらありますが、それらを無造作にジャジー&メロウ系とか括るのではなく、本当はそこに存在している多様性を見い出していくことこそが重要だと思います。

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